Gemini EnterpriseとMicrosoft 365 Copilotを比較——“デジタル部下”を雇うならどっち?できること・料金・選び方

コラム

「AIエージェントを会社に入れたいけれど、GoogleとMicrosoftのどちらを選べばいいのか分からない」という声をよく聞きます。Googleは2026年10月に「Gemini エージェント」を発表し、法人向けの「Gemini Enterprise」(日本語ページでは「ビジネス向け Gemini」)をひとつの“万能なデジタル部下”として打ち出しました。一方のMicrosoftも9月に新しいCopilotを発表し、仕事を丸ごと任せられるCowork、ずっと働き続けるAutopilotなどを加えています。この記事では、両社の公式ページに書かれている内容だけをもとに、できること・料金・管理のしやすさを並べ、どんな会社にどちらが合うのかを整理します。

公式の紹介動画

まずは両社の公式YouTubeチャンネルが公開している紹介動画です。1本目はGoogle Cloud公式チャンネルの「Introducing Gemini for your business: one universal agent for all your work」(2026年10月8日公開)で、チャットも複数ステップの仕事もコードも、ひとつのエージェントでこなすというコンセプトが紹介されています。

2本目はMicrosoft Copilot公式チャンネルの「The new Copilot: where work comes together」(2026年9月25日公開)です。新しいCopilotの入口となるHome、言葉で道具を作れるCode、自分から動き続けるAutopilotの3つが短くまとめられています。

公式Xで公開された紹介動画

Google Cloud公式Xは、発表当日に「Geminiはどこでも同じひとつのエージェント」という特徴を短い動画付きで投稿しています。Web、スマホ、パソコン、Google Workspace、Microsoft 365、Slackなど、どの入口から使っても同じ記憶と文脈を引き継ぐ、という説明です。

Microsoft公式Xも、新しいCopilotを「仕事の新しいOS」と位置づけ、人が主導権を持ち続けられるように設計した、というメッセージを動画付きで投稿しています。

そもそも何が違う?——「どこへでも出張する部下」と「Officeに住み込みの部下」

Gemini Enterpriseは、Googleが法人向けに用意した「仕事用のAIエージェント」の入れ物です。2026年10月の発表で中身が「Gemini エージェント」というひとつの万能エージェントに整理され、Gmail・ドライブ・ドキュメント・スプレッドシートなどのGoogle Workspaceはもちろん、Microsoft 365、Slack、Salesforce、ServiceNow、Jiraなど100種類以上の外部サービスにもつながる、と公式ページで説明されています。たとえるなら、社内のどの部署にも出張して仕事をこなす“身軽なデジタル部下”です。

Microsoft 365 Copilotは、Word・Excel・PowerPoint・Outlook・Teamsの中に最初から住み込んでいる“Office担当のデジタル部下”です。社内のメールや予定、ファイルの関係を理解する「Work IQ」という仕組みを土台に、普段使っているOfficeの画面からそのまま頼めるのが強みです。9月の発表では、作業を丸ごと任せるCowork、言葉でアプリや集計表を作るCode、指示を待たずに動き続けるAutopilotが加わりました。

ざっくり言うと、Googleは「どのツールを使っていても同じひとつのエージェント」、Microsoftは「Officeとその周辺を深く使いこなすエージェント」という考え方です。なお、Googleの発表全体像はGoogle Cloudが「Gemini エージェント」を発表——Gemini at Work 2026で見えた“仕事を任せるAI”の全体像でも紹介しています。

最初から付いてくるエージェントと機能

Gemini Enterpriseには、調べ物を代わりに深掘りする「Deep Research」、資料をまとめて読み込んで要点を整理する「Gemini Notebook」が全エディションに用意されています。上位のStandard・Plusでは、社内データを分析する「Data Insights」エージェント(プレビュー)や、他社製エージェントを選んで導入できる「Agent Marketplace」も使えます。Gemini エージェントは、大きな仕事を小さな“臨時の部下(サブエージェント)”に分けて進めたり、クラウド上で作業を続けたりできると説明されていますが、裏で長時間動く作業やスマホ・パソコンアプリなど一部機能は、公式ページ上で早期アクセス扱いとされています。

Microsoft 365 Copilotには、調査担当の「Researcher」、データ分析担当の「Analyst」、会議の進行を助ける「Facilitator」といった既製のエージェントが含まれます。営業・サービス・財務向けのエージェントも用意され、Notebooks、Pages、Createなどの機能も使えます。一方、Cowork・Code・Autopilotといった“長時間働く”系の機能は、月額ライセンスとは別に「Copilot Credits」という使った分だけ払うポイント制で課金される仕組みです。Autopilotは2026年9月時点で限定プレビューへの拡大段階、CodeとHomeは先行プログラム(Frontier)から順次提供とされています。

自分でエージェントを作る道具

「うちの会社専用の部下」を作りたい場合、Gemini Enterpriseでは全エディションにノーコード(プログラム不要)のエージェント作成機能(プレビュー)があり、Businessでは「Workflow Builder」として案内されています。プログラムを書いて本格的なエージェントを作り、社内に持ち込めるのはStandard・Plusで、その開発基盤である「Gemini Enterprise Agent Platform」(旧Vertex AIの発展版)は別売りの従量課金です。

Microsoftでは、Microsoft 365 Copilotのライセンスに簡易作成ツール「Agent Builder」と本格派の「Copilot Studio」が含まれ、社内向けエージェントは公正利用の範囲内で追加費用なしで使えると公式ページに書かれています。社外のWebサイトやアプリに置くエージェントを作ったり、Copilotライセンスを持たない人にも使わせたりする場合は、Copilot Studioを単体契約し、Copilot Creditsを購入する形になります。料理にたとえると、Googleは「基本キッチン付きで、本格厨房は別料金」、Microsoftは「社内向けの厨房込みで、外に出すお弁当は材料費が別」というイメージです。

料金を並べてみる

以下は、2026年10月30日時点で各社の公式ページに掲載されている価格です。どちらも米ドル表記で、1ユーザー(1シート)あたりの月額です。日本円の正式価格は、今回確認した公式ページでは掲載されていなかったため、契約前に販売パートナーや公式窓口で確認してください。

サービス・プラン 公式掲載価格(米ドル) 支払い条件など ひとことメモ
Gemini Enterprise Business $21〜/シート/月 月払い・年間契約を選択可(年間契約は割引、詳細額は未公表)。30日無料試用あり IT担当者なしで始められる小規模チーム向け
Gemini Enterprise Standard/Plus 公式製品ページでは非掲載 営業窓口への問い合わせ 自作エージェント、Agent Marketplace、高度なセキュリティ
Gemini Enterprise Agent Platform 従量課金 別売り 開発者向けのエージェント開発基盤
Microsoft 365 Copilot Business(追加ライセンス) $18.00(通常$21.00)/ユーザー/月 年払い。$18.00は2026年7月1日〜12月31日のキャンペーン価格で初年度のみ 300ユーザー以下の企業向け。対象のMicrosoft 365プランが別途必要
Microsoft 365 Business Standard+Copilot $23.50/ユーザー/月 年払い Officeアプリ一式とCopilotのセット
Microsoft 365 Business Premium+Copilot $32.00/ユーザー/月 年払い セキュリティ機能を強化したセット
Microsoft 365 Copilot(大企業向け追加ライセンス) $30.00/ユーザー/月 年払い。年間契約の月払いは$31.50 対象のMicrosoft 365プランが別途必要
Copilot Studio(単体) $200/月(25,000クレジット)、または従量$0.01/クレジット パックは年払い・繰り越し不可。従量はAzure経由 社外向けやライセンスのない人向けのエージェント
Cowork・Code・Autopilot Copilot Creditsによる従量課金 Microsoft 365 Copilotライセンスが前提 長時間働く“エージェント仕事”は使った分だけ

注意したいのは、Microsoftの追加ライセンスはOffice(Microsoft 365)の契約が前提だという点です。すでにMicrosoft 365を使っている会社なら上乗せ分だけで済みますが、Google Workspaceの会社が導入するなら土台の契約から考える必要があります。一方、Gemini Enterprise BusinessはGoogle Workspaceとは別に契約する独立した製品で、Microsoft 365の環境にもつなげられます。どちらも「月額ライセンス+エージェント仕事は従量課金」という二階建ての形に近づいているので、予算は“定額部分”と“使った分”に分けて考えるのがコツです。

日本語対応と使える地域

Microsoft 365 Copilotは、公式サポートページの対応言語一覧に日本語が含まれており、質問の入力・参照データ・回答のいずれも日本語で使えます。提供地域は公式ページで世界のパブリッククラウドと説明されています。

Gemini Enterpriseは日本語の公式製品ページ(「ビジネス向け Gemini」)が用意されています。また公式ドキュメントでは、データの保存場所を日本国内(東京リージョン)に指定できる地域として日本が挙げられています。ただし、Gemini エージェントの新機能ごとの日本語対応状況や、機能別の対応言語一覧は今回確認した範囲では未公表です。新機能を日本語で業務に使う前には、無料試用で実際に試してみるのが確実です。

管理・セキュリティ

どちらも「会社のデータをAIの学習には使わない」と公式に明記しています。そのうえでGemini Enterpriseは、Standard・Plusで監査ログ、データの保存場所の指定、暗号鍵を自社で管理する仕組み、社外へのデータ持ち出しを防ぐ仕組みなどに対応します。Gemini エージェントには、エージェントごとに“社員証”のような固有のIDを与え、何にアクセスし、いくら使い、何をしたかを記録する仕組みや、利用額の上限をリアルタイムで設定する機能があると発表されています。小規模向けのBusinessは、こうした企業レベルのセキュリティ機能の一部が含まれない点に注意が必要です。

Microsoft 365 Copilotは、既存のMicrosoft 365と同じ権限設定やデータ保護の仕組みをそのまま引き継ぎ、Purviewによる情報管理や電子情報開示、EU Data Boundaryなどにも対応します。従量課金の使いすぎを防ぐために、管理センターで部署ごとの利用上限やアラートを設定できるほか、Agent 365でエージェントの費用管理も広げていくと発表されています。すでにMicrosoftの管理画面に慣れている情報システム担当者にとっては、新しく覚えることが少ないのが利点です。

どちらが合う?会社のタイプ別の選び方

毎日WordやExcel、Teamsで仕事をしていて、すでにMicrosoft 365を契約している会社は、Microsoft 365 Copilotが自然な選択です。ふだんの画面にそのまま“部下”が増える感覚で、社内向けのエージェント作りも追加費用なしで始められます。

GmailやGoogleドライブが中心の会社、あるいはGoogle・Microsoft・Slack・Salesforceなど複数のツールが混在している会社は、Gemini Enterpriseが向いています。ツールの垣根を越えてひとつのエージェントが働く設計なので、「ツールごとに別のAIを契約する」という事態を避けやすくなります。300人程度までのチームなら、Businessエディションの無料試用から気軽に始められます。

どちらを選ぶにしても、いきなり全社導入するより、まずは10人ほどの部署で1〜2か月試し、「どの仕事を任せると何時間浮いたか」「従量課金がいくらかかったか」を記録してから広げるのがおすすめです。AIエージェントの運用ルールづくりについては、Google Cloud・Microsoft・Googleが示すAI運用の新段階——エージェント時代の安全管理と人材育成も参考になります。

まとめ

Gemini Enterpriseは「どのツールにも出張するひとつの万能エージェント」、Microsoft 365 Copilotは「Officeに住み込みで深く働くエージェント」です。料金は、Googleの小規模向けBusinessが月$21から、Microsoftは大企業向け追加ライセンスが月$30(年払い)、300人以下向けのCopilot Businessがキャンペーン中$18と、数字だけ見れば近い水準です。ただしGoogleの上位プランは価格非掲載で、Microsoftは土台のOffice契約が前提、さらに両社とも長時間働くエージェント機能は従量課金に移りつつあります。自社がふだん使っているツールを軸に選び、小さく試して効果と費用を測ってから広げるのが、失敗しない近道です。

参考リンク

この記事を書いた人
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毎日20時間以上AIの実践・研究に没頭するITエンジニア。20年以上にわたり、オンラインゲームや生活関連など幅広いジャンルのオウンドメディアで執筆・編集長を歴任。現在は上場企業グループの代表取締役を務め、複数の事業者団体で理事を兼務する経営者でもある。テクノロジーの最前線に身を置きつつ、地域の商店街や神社の運営にも深く携わるなど、地域活性化にも尽力。圧倒的な現場経験とITの専門知識、経営者の視点から、信頼性の高い有益な情報を発信している。
Olive株式会社 代表取締役

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