「Gemini 4 Carbon」とは?——Googleの最新最上位AI、Argonから何が変わった?性能・料金を主要AIと比較

コラム

Google DeepMindが、新しい最上位AIモデル「Gemini 4 Carbon(ジェミニ・フォー・カーボン)」を発表しました。公式ブログの日付は米国時間2026年10月28日で、公式Xでの発表は日本時間10月29日(木)午前2時ごろです。Googleは「これまでで最も強力なモデル」と位置づけ、特にサイバーセキュリティと、何日もかかる長い仕事をやり抜く力を前面に出しています。

ただし、今すぐ誰でも使えるわけではありません。まずは信頼できるサイバー防御の専門家に限って提供が始まり、一般の開発者・企業・個人ユーザーへの提供時期は未発表です。この記事では、2週間前に登場した「Gemini 4 Argon」から何が変わったのか、主要AIとの性能・料金の比較、日本で使えるのかどうかを、専門知識がなくても分かるように整理します。

前のモデルについては、当サイトの「Google、新AI『Gemini 4 Argon』を発表——まず信頼できるサイバー防御の現場から」と「Gemini 4 Argon」一般提供開始の記事でも紹介しています。

Google DeepMind公式Xでの発表

Google DeepMindの公式Xアカウントによる発表投稿です(日本時間10月29日 午前2時ごろ)。なお、記事執筆時点で、Google・Google DeepMind・Google for Developersの公式YouTubeと公式XにGemini 4 Carbonの紹介動画は見当たりませんでした。

Gemini 4 Carbonとは?

Gemini 4 Carbonは、GoogleのAI「Gemini」の新しい最上位モデルです。発表したのは、Google DeepMindのチーフAIアーキテクトであるKoray Kavukcuoglu(コライ・カヴクチュオール)氏。10月中旬に一般提供が始まったGemini 4 Argonを土台に、さらに鍛え上げたモデルと説明されています。

たとえるなら、Argonが「大きな案件を最後まで仕上げる粘り強いプロジェクトリーダー」だとすると、Carbonは「そのリーダーが何日も現場に張り付き、行き詰まっても別の道を探し続けるうえに、セキュリティの監査役まで務められる人」に近いイメージです。現時点で分かっている基本情報は次のとおりです。

項目内容
開発元Google DeepMind(米国)
位置づけGoogleで最も強力なフロンティア(最先端)モデル。Gemini 4 Argonの上位
得意分野何日も続く長い作業(特に大規模なプログラム開発)、サイバーセキュリティ
総合評価第三者機関Artificial AnalysisのIntelligence Index v5.0で59点・1位(Argonは50点)
現在使える人一部のサイバー防御の専門家(Fairwind Program参加者の一部)
一般提供の時期未発表(「できるだけ早く」とのみ説明)
API料金導入価格は入力100万トークンあたり2ドル、出力10ドル(Argonと同額)。導入価格の終了日は未公表
APIのモデル名未公表(記事執筆時点の料金ページに未掲載)
一度に読める量・書ける量未公表
日本での提供未発表

Argonから何が変わったのか

一番の変化は「長い仕事への粘り強さ」です。Googleの社内テストでは、Carbonが何日も続けて動き続け、大きなプログラムの集まり(コードベース)をまたぐ多段階の作業で、行き止まりにぶつかってもあきらめずに進めたと紹介されています。

ウェブサイト作りの腕前を人の投票で比べる「WebDev Arena」では、Argonより評価点(Elo)が89点上がり、1768点で4位になったとしています。また、総合的な賢さを測るArtificial Analysisの指標では、Argonの50点から59点へと9点伸び、他社の最上位モデルを抑えて1位になりました。

もう一つ、Googleが強調しているのが「うそや早とちりが減った」点です。根拠のない主張はArgonの約半分に減り、指示と実際の状況が食い違うときは、勝手に進めずにまずユーザーに知らせるようになったとしています。くわしくは後の「安全面の改善」で紹介します。

サイバーセキュリティでの大きな進歩

Carbonの看板となる能力が、サイバーセキュリティです。システムの弱点(脆弱性)を見つけ、本当に悪用できるかを確かめ、修正するまでを、AIがかなりの部分まで自力でこなせるとされています。会社のネットワークにたとえると、「鍵のかけ忘れを探し、実際に開くか試し、正しい鍵に付け替える」一連の作業です。公式ブログで紹介された主な成果は次のとおりです。

  • 安全なプログラムを書く力:Google社内の評価で、安全なコードを生成できた割合がArgonの2倍以上になりました。
  • Chromeチームでの評価:GoogleのブラウザChromeの開発チームが、質の高い修正プログラム(パッチ)を作る力を比べたところ、「別の研究機関の大型フロンティアモデル」より10倍以上優れていたとしています(相手のモデル名は未公表)。
  • 外部企業の評価:クラウドセキュリティ企業のWizは、ウェブサイトへの侵入テストの評価で、Carbonが首位だったと報告しています。
  • 外部ベンチマーク:安全対策(ガードレール)を外した状態での評価で、弱点探しのSEC-bench Proが88.2%、悪用の検証のExploitGymが54.8%、修正のCWE-benchが71.0%でした。

こうした能力は、守る側にとっては頼もしい一方、攻撃者の手に渡れば危険にもなります。そのためGoogleは、まず審査を通った防御側の組織にだけ提供する慎重な方法をとっています。

主要AIとの性能比較

Google DeepMindが公式ページで公開した比較表から、全項目を抜き出しました。比較相手は、前モデルのGemini 4 Argon、OpenAIの最上位モデルGPT-6 Astra、AnthropicのClaude Opus 5.5とClaude Fable 5.1です。数字はいずれも高いほど良い結果を表します(Vending-Bench 2は自販機経営シミュレーションの最終残高で、単位はドル)。

評価テスト測っていることGemini 4 CarbonGemini 4 ArgonGPT-6 AstraClaude Opus 5.5Claude Fable 5.1
AA Index v5.0総合的な賢さ(Artificial Analysis)★ 5950575849
Vals Index v2.2企業の実務タスク★ 70.469.265.070.2—
SWE-sweepソフトウェア開発★ 9.64.39.53.62.9
FrontierSWE 2難しいソフトウェア開発61.255.0★ 65.562.356.3
Terminal-Bench 4.0(AA)コマンド操作による作業★ 65.257.159.159.652.0
Agents’ Last Exam v1.1エージェント(自分で作業を進めるAI)としての作業★ 77.469.073.171.6—
OSWorld-2.1(オフライン版)パソコン画面の操作81.574.780.9★ 87.276.8
AutomationBench業務の自動化★ 53.951.341.442.531.4
Vending-Bench 2長期間の経営シミュレーション(残高・ドル)★ 16,48413,71815,5159,2355,422
Chartography図表の読み取り★ 72.571.671.066.346.2
Blueprint-Bench 2図面・空間の理解★ 58.654.449.751.241.9
GraphWalks(25.6万〜100万トークン)とても長い資料の理解★ 96.284.271.866.865.0
RiemannBench数学★ 80.076.072.069.665.6
Terminal-Bench-Science 0.1(AA)科学分野の作業★ 64.852.963.359.043.3
CWE-benchセキュリティの弱点の修正★ 71.068.068.067.058.0
ExploitGym弱点を悪用できるかの検証★ 54.842.042.434.5—
SEC-bench Proセキュリティの弱点探し★ 88.283.485.4——

★と色付きは各テストの1位です(数値はGoogle DeepMind発表)。

「—」は比較表に数値が載っていない項目です。Google以外のモデルの数値は、原則として各社が自ら公表した値をGoogleが集めたものです。また、DeepSeekやxAIのGrokなどは今回の公式比較表に含まれていません。

17項目のうち15項目でCarbonが1位です。一方で、難しいソフトウェア開発のFrontierSWE 2ではGPT-6 Astraが、パソコン画面の操作を測るOSWorld-2.1ではClaude Opus 5.5が上回っています。特に差が大きいのは、とても長い資料を読み解くGraphWalksと、セキュリティ関連の3項目です。「なんでも圧勝」ではなく、「長い仕事と守りの仕事で頭ひとつ抜けた」と受け止めるのが妥当でしょう。

安全面の改善

Carbonには、Argonと同じ多層的な安全対策が組み込まれています。そのうえで、Googleは次のような改善を挙げています。

  • コマンド操作のテスト(Terminal-Bench 4.0)で、ずるをして課題を「解いたことにする」成功率が0.0%、試みた割合も0.4%にとどまりました。
  • AIが人の意図から外れた行動をとる深刻な警告が、約80%減りました。
  • 根拠のない主張が、Argonの約半分に減りました。
  • 頼まれていないことまでやりすぎる「出しゃばり」が26%、逆に頼まれたことを十分にやらない「手抜き」が29%減りました。
  • 外部サイトに隠された指示でAIを乗っ取る攻撃の評価(Gray Swan)で、攻撃の成功率が0.0%でした(Argonは0.7%)。

また、米国政府による任意の事前テストにも参加しているとのことです。ただし、これらの数値もGoogle自身の発表であり、第三者による同条件での検証はこれからです。

料金(主要AIとのAPI料金・プラン比較)

API(自社のシステムからAIを呼び出す窓口)の料金について、Googleは導入価格を入力100万トークンあたり2ドル、出力100万トークンあたり10ドルと発表しました。Argonの現在の導入価格と同じです。同じ資料をくり返し読ませる場合の「キャッシュ」は入力価格の95%引き(0.10ドル)です。トークンはAIが文章を数える単位で、100万トークンは、本にすると数冊分にあたる大きな量です。

導入期間が終わると、入力4ドル・出力20ドルに上がります。ただし、Carbonの導入期間がいつまでかは未公表です。また、記事執筆時点ではGemini APIの公式料金ページにCarbonはまだ載っておらず、一般の開発者が契約できる状態ではありません。主要AIのAPI料金(100万トークンあたり、標準料金)と並べると次のとおりです。

モデル提供元入力出力備考
Gemini 4 CarbonGoogle2.00ドル(導入後4.00ドル)10.00ドル(導入後20.00ドル)導入価格の終了日は未公表。キャッシュ済み入力0.10ドル。一般向けAPI提供は未定
Gemini 4 ArgonGoogle2.00ドル(12月1日から4.00ドル)10.00ドル(12月1日から20.00ドル)11月30日まで導入価格。キャッシュ済み入力0.10ドル(12月から0.20ドル)。無料枠なし
Gemini 3.1 Pro PreviewGoogle2.00ドル12.00ドル20万トークン以下の場合。それを超えると4.00ドル/18.00ドル
Gemini 3.8 FlashGoogle0.75ドル(2027年1月1日から1.50ドル)3.75ドル(2027年1月1日から7.50ドル)速さと安さ重視のモデル
GPT-6 AstraOpenAI10.00ドル50.00ドルOpenAIの最上位。キャッシュ済み入力1.00ドル(27.2万トークン以下の場合)
GPT-6.1 SolOpenAI2.00ドル10.00ドルキャッシュ済み入力0.10ドル
Claude Fable 5.1Anthropic10.00ドル50.00ドルAnthropicの最上位。キャッシュ読み取り0.25ドル
Claude Opus 5.5Anthropic4.00ドル20.00ドルキャッシュ読み取り0.20ドル
Grok 4.7xAI2.00ドル6.00ドル20万トークン未満の場合。20万以上は4.00ドル/12.00ドル
DeepSeek V4 ProDeepSeek4.5〜9元13.5〜27元人民元建て。時間帯で変動(安い方が空き時間帯)

※料金は2026年10月29日(日本時間)に各社の公式料金ページで確認したものです。Batchなどの割引や長い資料向けの割増は一部しか含めていません。最新の料金は各社の公式ページでご確認ください。

導入価格の2ドル・10ドルは、GPT-6 AstraやClaude Fable 5.1の5分の1で、性能表で競ったClaude Opus 5.5の半額です。導入期間後の4ドル・20ドルでも、Opus 5.5と同じ水準にとどまります。Artificial Analysisは、同社の評価課題を1問こなす費用をCarbonが7.76ドル、Claude Opus 5.5が10.04ドル、GPT-6 Astraが6.25ドルと試算しています。答えを出すまでに使う量もモデルで違うため、「単価」と「実際の費用」は分けて考えるのがおすすめです。

個人向けのプランでは、Carbonがどの有料プランで使えるようになるかは未発表です。参考として、各社の上位モデルが使える主なプランを並べます。

プラン提供元月額使える上位モデル
Google AI PlusGoogle725円Flashモデル
Google AI ProGoogle2,900円Gemini 4 Argon、Proモデル(Carbonへの対応は未発表)
Google AI UltraGoogle14,500円〜(20倍枠は32,000円)Gemini 4 Argonを最も多く利用可能(Carbonへの対応は未発表)
ChatGPT Plus/ProOpenAI地域により異なる(公式料金ページで確認)PlusでGPT-6 Astra、ProでAstraを使った「Pro推論」
Claude ProAnthropic20ドル(年払いは月17ドル相当)Claude Opus 5.5(Fableは追加の利用クレジットで利用)
Claude MaxAnthropic100ドル〜Proより多くの利用枠

※Googleのプランは日本向け公式ページの表示価格、Anthropicは米ドル建ての税抜価格です。

ほかのAIとの料金の違いをもっと広く知りたい方は、「LLM API料金比較」の記事も参考にしてください。

いつ・誰が使える?日本での提供状況

Googleの説明では、今週から一部のサイバー防御の専門家への提供を始め、続いて信頼できるパートナーを「Fairwind Program(フェアウインド・プログラム)」を通じて段階的に増やしていくとしています。Fairwind Programは、政府機関、重要インフラ(社会を支える基盤)の事業者、多くの人が使う中核的なITサービスの提供企業などを優先する、審査制の早期提供プログラムです。参加組織は世界で650以上とされています。

開発者・企業・一般ユーザーへの提供は「できるだけ早く」とされていますが、具体的な日程は未発表です。サイバー防御の現場から先に提供を始める進め方は、Argonのときと同じです。

日本での提供については、現時点で日本向けの案内は確認できず、未発表です。一般の利用者向けにはまだどの国でも提供されていないため、日本だけが遅れているわけではありません。いま日本で使えるGoogleの最上位モデルは、Google AI Pro・Ultra加入者向けのGemini 4 Argonです。

Googleの最新の業務向けAIの動きについては、Geminiエージェントの記事や、速さ重視のGemini 3.8 Flashの記事もあわせてご覧ください。

ビジネスでの受け止め方

多くの中小企業にとって、Carbonは「今日から使う道具」ではなく、「近いうちに選択肢に加わる道具」です。今できる準備は、Argonで日々の資料作りや分析を試し、どの仕事をAIに任せられそうかを見きわめておくことです。Carbonが一般提供されたときに、同じ仕事をCarbonにも任せて比べれば、効果がはっきり分かります。

セキュリティの面でも見逃せない変化です。AIが弱点探しを得意になるということは、攻撃する側も同じような道具を手にする日が近いということでもあります。自社のホームページや業務システムの更新を後回しにしていないか、この機会に点検しておくと安心です。

まとめ

Gemini 4 Carbonは、Argonを土台に「何日も続く長い仕事」と「サイバーセキュリティ」を大きく伸ばした、Googleの新しい最上位モデルです。Google DeepMindが公表した比較表では17項目中15項目で1位となり、API料金は導入価格で入力2ドル・出力10ドルと、他社の最上位モデルより割安に設定されています。

一方で、今はサイバー防御の専門家向けの限定提供で、一般提供の時期、日本での提供、導入価格の終了日、APIのモデル名などは未発表・未公表です。性能の数字もGoogle側の発表が中心です。続報を待ちつつ、まずはArgonで自社の仕事との相性を確かめておくのがおすすめです。

参考リンク

この記事を書いた人
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毎日20時間以上AIの実践・研究に没頭するITエンジニア。20年以上にわたり、オンラインゲームや生活関連など幅広いジャンルのオウンドメディアで執筆・編集長を歴任。現在は上場企業グループの代表取締役を務め、複数の事業者団体で理事を兼務する経営者でもある。テクノロジーの最前線に身を置きつつ、地域の商店街や神社の運営にも深く携わるなど、地域活性化にも尽力。圧倒的な現場経験とITの専門知識、経営者の視点から、信頼性の高い有益な情報を発信している。
Olive株式会社 代表取締役

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