「Kimi K3.1 Pro」とは?——中国Moonshot AIの最新AI、K3から何が変わった?性能・料金を主要AIと比較

コラム

中国のAI企業Moonshot AI(ムーンショットAI)が、対話AI「Kimi(キミ)」の新しい最上位モデル「Kimi K3.1 Pro」を発表しました。公式Xでの発表は日本時間2026年10月24日の午前2時15分ごろで、同じ日からKimiのWeb版、アプリ、プログラミング用ツール、API(他のサービスから呼び出す窓口)で使えるようになっています。

ひとことで言えば、7月に登場した「Kimi K3」を土台に、追加の“特訓”を大量に積んだ改良版です。プログラミング、3Dモデル作り、金融の調べものと資料作りが特に伸びたとされ、しかもAPI料金はK3より3分の1安くなりました。さらに、モデルの中身(重み)を11月4日までに公開すると予告しています。この記事では、何が変わったのか、海外の主要AIと比べてどうなのか、料金や注意点まで、専門知識がなくても分かるように整理します。

前のモデルKimi K3については、こちらの記事で紹介しています。中国の最新AI「Kimi K3」が登場——2.8兆パラメーターでClaude Fable 5を一部上回る

公式の紹介動画

Kimiの公式YouTubeチャンネル(Kimi AI)が公開した約1分半の紹介動画です。動画の説明文には「プロジェクト丸ごとのコーディング、寸法を指定して作る3Dモデリング、信頼できる金融の仕事」とあり、映像ではK3.1 Proで作ったとされるゲーム画面、3Dの建物、3Dを使ったWebサイトなどの作例が次々に紹介され、最後に「KIMI K3.1 Pro」のロゴで締めくくられます。

Kimi K3.1 Proとは?

Kimi K3.1 Proは、新しい「K3.1シリーズ」の最初のモデルです。公式ブログでは「3兆クラスのオープンウェイト(中身を公開する)モデルとして、これまでで最も高性能」と説明されています。基本的な仕様は次のとおりです。

項目内容
開発元Moonshot AI(中国・北京)
位置づけK3.1シリーズ最初のモデル。Kimiの最上位(フラッグシップ)モデル
規模全体で2.8兆パラメーター、1回の処理で使うのは1,040億パラメーター(必要な専門家だけが働く「MoE」方式)
一度に読める量約100万トークン(1,048,576トークン)。分厚い報告書や大量のプログラムを丸ごと渡せる量です
入力できるもの文章に加えて画像・動画(目で見て理解する機能を内蔵)
高速版Kimi K3.1 Pro Highspeed(同じ賢さで約2〜3倍速い)
使える場所Kimi.ai(Web)、Kimiアプリ(iOS/Android/HarmonyOS)、Kimi Work(デスクトップ版)、Kimi Code(プログラミング用)、Kimi API
中身(重み)の公開2026年11月4日までに公開予定(記事執筆時点では未公開)
ライセンス(利用条件)未発表

名前の「K3.1」は「K3の改良版」、「Pro」はモデル名の一部です。なお、Kimiには「Pro」という名前の有料会員プランもあり、紛らわしいので注意してください。モデルのK3.1 Proは、無料プランでもWeb版などで利用制限つきで試せます。

前のKimi K3から何が変わったのか

公式ブログによると、K3.1 ProはK3をベースに「事後学習(出来上がったAIに、仕事の型を教え込む追加の特訓)」へ大幅に多くの計算資源をつぎ込んだモデルです。数百の分野の課題を同時に練習させる仕組みを整えたことで、どの分野でもまんべんなく成績が上がったとしています。主な変化は次のとおりです。

  • プログラミング:Unity、Unreal Engine、Godotといったゲーム開発ツールで、プロジェクトを丸ごと作れるとしています。Moonshot AI社内の長時間コーディングテストでは、K3の55.95%から61.2%に向上しました。
  • 3D・CAD:3D制作ソフトBlenderや設計用のCADを、プログラムを通じて直接操作できます。Kimi.aiとKimiアプリには、3Dモデルをオンラインで確認・修正し、3Dプリンター用にダウンロードしたり動画として書き出したりできる新機能「3D Make」も加わりました。
  • 金融の仕事:社内テストで、K3と比べて財務モデル作りが7.2ポイント、金融リサーチが11.6ポイント向上し、業務運営のテストでは約4.2倍の成績になったとしています。
  • うそ(ハルシネーション)の減少:わざと間違えやすい質問を集めた社内テストで、事実の誤りの割合がK3の23.4%から8.3%に下がりました。公式Xでは「ハルシネーションが65%減った」と表現しています。ただしブログでは「普段使いでの誤り率ではない」と断っています。
  • 料金:API料金はK3(入力3ドル・出力15ドル)から、入力2ドル・出力10ドル(いずれも100万トークンあたり)へ、3分の1安くなりました。

評価テストの結果を主要AIと比較

Moonshot AIが公式ブログで公表した評価テストの結果から、代表的なものを抜き出しました。比較相手は、AnthropicのClaude Opus 5.5とClaude Fable 5.1、OpenAIのGPT-6 Astra、中国のDeepSeek-V4.1-FlashとGLM-5.3です。数値はすべてMoonshot AIの発表で、各社とも最も深く考える設定での結果とされています。

テスト(内容)Kimi K3.1 ProClaude Opus 5.5GPT-6 AstraClaude Fable 5.1DeepSeek-V4.1-FlashGLM-5.3
Terminal-Bench 4.0(コマンド操作で作業をこなす)65.7★ 66.458.257.942.341.8
Terminal-Bench-Science 0.1(科学系の作業)38.163.3★ 68.140.015.78.1
SWE Marathon v1.1(長時間のソフト開発)★ 51.746.342.545.640.042.5
DeepSWE v1.1(ソフト開発)75.574.274.167.4★ 77.066.9
Program Bench(プログラム作成)31.5★ 65.050.053.529.119.0
BenchCAD(ツールあり・CAD設計)92.7★ 96.295.992.681.6—
HLE-Full(ツールあり・超難問)★ 70.067.757.265.658.862.5
BrowseComp(ネット調査)★ 92.190.891.5———
OfficeQA Pro v2(事務文書の読み取り)★ 64.462.254.454.540.431.1
GDP.pdf(PDF資料の読み取り)★ 85.783.985.583.873.0—
OSWorld V2.1(パソコン操作)79.6★ 81.875.880.769.3—

★と色付きは各テストの1位です(数値はMoonshot AI(Kimi公式技術ブログ)発表)。「—」は発表資料に数値が載っていないものです。

11項目のうちKimi K3.1 Proが1位なのは5項目で、長時間のソフト開発、超難問、ネット調査、事務文書やPDFの読み取りで強さを見せています。一方で、科学系の作業やプログラム作成(Program Bench)では海外勢に大きく離されており、「すべてで最強」というわけではありません。料理に例えるなら、和食の大会では優勝するけれど、フレンチでは上位陣に届かない、といったイメージです。

また、これらはMoonshot AI自身が測った数値で、比較相手のモデル名や条件も同社の資料どおりに載せています。他の機関による検証結果はまだそろっていないため、参考値として受け止めるのが安全です。

公式Xで公開された紹介動画

Kimiの公式Xアカウントが発表と同時に投稿した、3D制作の能力を紹介する短い動画です。投稿文では、K3.1 ProがBlender、Unreal、Godot、CADの中で直接作業できること、CAD設計のテスト(ツールあり)で92.7%を記録したことが紹介されています。動画では、3D制作ソフトの画面上で、滝や緑のある吹き抜けの建物が少しずつ組み上がっていく様子が映されています。

料金を主要AIと比較

APIで使う場合の料金を、各社の公式料金ページの掲載額で比べました。単位はすべて100万トークンあたりの米ドル(税別)で、標準的な使い方の料金です。100万トークンは日本語でおおよそ数十万〜100万文字程度の分量です。

モデル(会社)入力出力補足
Kimi K3.1 Pro(Moonshot AI)$2.00$10.00キャッシュ利用時の入力$0.20。100万トークンまで同じ料金
Kimi K3.1 Pro Highspeed(Moonshot AI)$4.00$20.00高速版
Kimi K3(Moonshot AI・前モデル)$3.00$15.00参考:前のモデル
Claude Opus 5.5(Anthropic)$4.00$20.00キャッシュ利用時の入力$0.20
Claude Fable 5.1(Anthropic)$10.00$50.00Anthropicの最上位モデル
GPT-6 Astra(OpenAI)$10.00$50.00入力27.2万トークン以下の場合。それを超えると入力$20・出力$75
Gemini 4 Argon(Google)$2.00$10.002026年11月30日までの価格。12月1日からは入力$4・出力$20
DeepSeek-V4.1-Flash(DeepSeek)$0.30$1.20混雑時間帯の価格。それ以外の時間帯は半額

最上位クラスのAIの中では、Kimi K3.1 Proは「GoogleのGemini 4 Argonの期間限定価格と並ぶ最安クラス」で、Claude Fable 5.1やGPT-6 Astraの5分の1です。一方、同じ中国勢のDeepSeekの軽量モデルは桁違いに安く、「性能の高さ」と「安さ」のどちらを重視するかで選び方が変わります。

APIを使わず、Kimiのアプリやサイトで使う場合は会員プランになります。公式の料金解説(年払いの月額換算)は次のとおりです。

プラン月額(年払い換算)K3.1 Proの使える範囲
Free$0Web版KimiとKimi Workで利用制限あり
Plus$15Web版Kimi・Kimi Work・Kimi Codeで利用可
Pro$31上記に加えて高速版(Highspeed)も利用可。エージェント機能の利用枠は2倍
Max$79Proの内容に加え、100万トークンの超長文チャットが使え、エージェント機能の利用枠は5倍
Ultra$159Maxの内容に加え、エージェント機能の利用枠は10倍

どこで、どうやって使えるのか

  • まず試すなら:Kimi.aiのWeb版か、スマートフォンのKimiアプリ。公式の料金解説によると、無料プランでもWeb版とKimi Workでは利用制限つきでK3.1 Proを使えます。
  • パソコンで作業を任せるなら:デスクトップアプリ「Kimi Work」(バージョン3.1.0以降、WindowsとAppleシリコン搭載Mac)。
  • プログラミングに使うなら:「Kimi Code」で /model コマンドからK3.1 Proを選びます。
  • 自社のシステムに組み込むなら:Kimi APIで kimi-k3.1-pro(高速版は kimi-k3.1-pro-highspeed)を指定します。OpenAIやAnthropicと同じ書き方で呼び出せるため、既存の仕組みから切り替えやすいのが特徴です。利用には最低1ドルのチャージが必要です。
  • 会社で使うなら:法人向けの「Kimi Business」があります。法人向けの「Kimi Enterprise」では、管理者が有効にするまでK3.1 Proは使えない設定になっています。

日本語については、Kimiの公式サイトやAPIの案内、料金解説に日本語版のページが用意されています。ただし、日本語での性能を示す評価値は公式には発表されていないため、実際の業務で使う前に、自社の文書で試してみることをおすすめします。

使う前に知っておきたい注意点

  • 中身の公開はまだ:重みの公開は「11月4日まで」と予告されている段階です。記事執筆時点(日本時間10月28日)で、Moonshot AIのHugging Face(AIモデルの公開サイト)にK3.1 Proはまだ掲載されていません。どんな条件で使えるかを決めるライセンスも未発表です。
  • サイバー攻撃に使われにくくする工夫:公開版では、学習の途中段階からサイバーセキュリティ関連のデータを取り除いたと説明しています。その結果、セキュリティ関連のテストの成績は、取り除かなかった場合の90.5%から81.0%に下がりました。同社は、この分野の能力は、3か月以上前から公開されている海外の最先端の非公開モデルより低い水準だとしています。
  • データの扱い:APIでは、送ったデータを保存しない「ゼロデータ保持」を選べます。中国企業のサービスであることを踏まえ、機密情報を扱う場合は社内ルールに沿って利用範囲を決めておくと安心です。
  • 発表直後の混雑:公式Xは日本時間10月26日早朝、会員プランで利用制限にかかりやすかったことや、利用枠が余計に減っていたことを謝罪しました。全会員に月間利用枠の25%分を1回だけ戻し、無駄な処理を減らす調整をしたとしています。
  • 古いモデルの終了:旧シリーズのK2は、2026年10月31日から新規登録ユーザーは使えなくなり、12月末までにすべて提供終了の予定です。K2をAPIで使っている場合は、切り替えの準備が必要です。

中小企業での使いどころ

K3.1 Proが特に向いていそうなのは、「大量の資料を読み込んで、表や報告書にまとめる」仕事です。事務文書やPDFの読み取りテストで1位を取っており、100万トークンまで料金が変わらないため、決算資料や契約書の束をまとめて渡すような使い方と相性がよいと考えられます。

もう一つは、試作品や販促物の3Dモデル作りです。「3D Make」で作ったモデルは3Dプリンター用にダウンロードできるとされており、ものづくりの会社が簡単な部品や模型のたたき台を作る用途が考えられます。

一方で、機密性の高い情報を扱う業務や、日本語の細かいニュアンスが重要な文章作りでは、まず小さく試してから判断するのが現実的です。APIの料金が安いので、今使っているAIと同じ仕事をさせて、出来ばえと費用を比べてみる「相見積もり」のような使い方から始めるとよいでしょう。

まとめ

Kimi K3.1 Proは、K3に大量の追加特訓を施し、プログラミング、3D制作、金融の仕事、うその少なさを伸ばしたモデルです。Moonshot AIの発表では、一部のテストで海外の最上位AIを上回りつつ、API料金はClaude Fable 5.1やGPT-6 Astraの5分の1に抑えられています。

ただし、評価は同社自身の測定で、科学系の作業などでは海外勢に差をつけられています。中身の公開予定日は11月4日で、ライセンスはまだ発表されていません。公開後に第三者の検証がそろってくれば、実力がよりはっきりするはずです。気になる方は、まず無料プランかAPIの少額チャージで、自社の仕事に合うか試してみてください。

参考リンク

この記事を書いた人
この記事を書いた人

毎日20時間以上AIの実践・研究に没頭するITエンジニア。20年以上にわたり、オンラインゲームや生活関連など幅広いジャンルのオウンドメディアで執筆・編集長を歴任。現在は上場企業グループの代表取締役を務め、複数の事業者団体で理事を兼務する経営者でもある。テクノロジーの最前線に身を置きつつ、地域の商店街や神社の運営にも深く携わるなど、地域活性化にも尽力。圧倒的な現場経験とITの専門知識、経営者の視点から、信頼性の高い有益な情報を発信している。
Olive株式会社 代表取締役

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