OpenAIでCodexとChatGPTを率いるティボー・ソティオ(Thibault Sottiaux)氏が続けている「28日間、毎日ひとつ明確な改善を出す。出せない日はフルリセット」という公開の約束は、19日目を迎えました。17日目、18日目と2日続けてフルリセットでしたが、19日目は3日ぶりの“改善の日”です。本人の言葉は「小さな更新」。常時稼働のAIエージェント「dots」の通話がより速くつながるようになったこと、CodexとChatGPT Workで会話の途中にAIの“考える深さ”を変えてもキャッシュ(読み込み済みの内容の再利用)が無効にならなくなったこと、そしてCodexのコマンドライン版(Codex CLI)の更新、の3つです。それぞれの中身と、中小企業や個人事業主にとってどう関係するのかを整理します。
宣言そのものは「毎日改善、できない日はフルリセット」宣言の解説記事、前日の18日目はDecisions API正式版などを挙げつつフルリセットになった記事、17日目はフルリセットとDaybreak Blueを紹介した記事で取り上げています。
19日目は「小さな更新」3つで、改善の日に
「Day 19/」の投稿は、日本時間10月24日午前8時12分ごろでした。米国西海岸では10月23日の午後4時すぎにあたります。18日目(日本時間10月23日午後1時46分ごろ)や17日目(同10月22日午後3時55分ごろ)より、日本から見るとかなり早い時間の発表です。
日本語にすると、おおよそ次のとおりです。「19日目。小さな更新です。dotsの通話がずっと速くつながるようになり、CodexとWork(ChatGPT Work)では会話の途中で推論(考える深さ)を変えてもキャッシュが無効にならなくなりました。Codex CLIも更新しました」。
ソティオ氏は約1分後、自分の投稿への返信でCodex CLIの中身を補足しています。「再利用できるプロンプトのプリセット、モデルと権限をその場で指定できる設定、企業向けのMCPサインインを追加しました。長いセッションを再開するときの失敗も直し、Windowsの社内プロキシ認証にも対応しました。驚いたことに、CLIの利用はDevDay以来2倍に伸びています」。DevDayは、9月29日(米国時間)に開かれたOpenAIの開発者向けイベントです。
19日間の流れ——改善12回、全員向けリセット8回
これまでの集計では、明確な改善の日は16日目までで11回、全員向けのリセットは2日目、6日目、8日目、10日目、13日目、15日目、17日目、18日目の8回でした。19日目は改善の日なので、改善は12回目、リセットは8回のまま。宣言は残り9日となりました。
なお、18日目のリセットについてソティオ氏は「明日の太平洋時間午前10時までに、小さな新機能と一緒に反映」と書いていました。文字どおりなら日本時間10月24日の午前2時ごろまでの計算です。ただ、19日目の投稿はリセットの反映に触れておらず、今回の「小さな更新」がその「小さな新機能」にあたるのかも書かれていません。OpenAI開発者コミュニティで宣言の進み具合をまとめているスレッドにも、執筆時点(日本時間10月24日朝)では19日目の記録はまだ追加されていません。
dotsの通話がより速くつながるように
dots(ドッツ)は、OpenAIが9月末に発表した常時稼働のAIエージェントです。専用のクラウド上のパソコンで24時間動き、ChatGPTやSlack、Teamsから仕事を頼めます(dots発表の解説記事)。文字でやり取りするだけでなく、ChatGPTのデスクトップ、Web、スマホから“電話をかける”ように音声で話しかけることもでき、5日目にはスマホから自分のdotを作れるようにもなりました(5日目の記事)。
この通話については、10月上旬からOpenAI開発者コミュニティに「何度かけても通話がつながらない」「『通話に接続できませんでした』と表示される」「iPhoneではほとんどつながらない」といった報告が相次いでいました。今回の改善は、通話がつながるまでの時間を縮めるものです。ソティオ氏は「ずっと速く」と書いていますが、何秒から何秒になったのかといった数字や、これまでの接続失敗の報告がすべて解消されたのかどうかは示していません。
たとえるなら、内線電話をかけて相手が出るまでの“待ち時間”が短くなったようなものです。移動中にdotへ口頭で指示を出したい人や、打ち合わせの合間に進み具合を声で確かめたい人にとっては、使い勝手に直結する改善といえます。
会話の途中で「考える深さ」を変えてもキャッシュが切れない
CodexやChatGPT Workでは、AIにどれだけじっくり考えさせるか(推論の強さ)を「低」「中」「高」などから選べます。簡単な作業は軽く、難しい作業はじっくり、と途中で切り替えられるのは便利ですが、これまでは切り替えた直後に“キャッシュ切れ”が起きることがありました。
キャッシュとは、AIが一度読み込んだ会話の内容を覚えておき、次の依頼で再利用する仕組みです。再利用できれば読み直しが減り、速く、使用量の消費も少なく済みます(12日目の記事でも紹介しました)。ところが、会話の途中で推論の強さを変えると、それまでの内容をもう一度読み直すことになり、使用量が余分に減ってしまう——という報告が、CodexのGitHubなどで以前から上がっていました。料理にたとえるなら、火加減を変えただけなのに、下ごしらえを最初からやり直していたような状態です。
19日目の改善で、CodexとChatGPT Workでは会話の途中で推論の強さを変えても、キャッシュが無効にならなくなりました。15〜16日目には「古い会話に戻っても割高にならない」改善が出ており(15〜16日目の記事)、今回はそれに続く“キャッシュ切れ”対策です。長い作業の途中で「ここからは慎重に」と考える深さを上げても、利用枠を余計に減らさずに済みます。ただし、対象のモデルやアプリの細かな条件は、投稿には書かれていません。
Codex CLIの更新——よく使う指示の保存、企業向けの接続、長い作業の再開
3つ目はCodex CLIの更新です。Codex CLIは、パソコンの「ターミナル」と呼ばれる文字だけの画面でCodexを動かすための道具です。ソティオ氏が挙げた内容は、日本時間10月23日午後1時48分ごろにGitHubで公開された正式版0.164.0の変更点と一致しています(18日目の記事でも少し触れました)。主な中身は次のとおりです。
- よく使う指示や操作を、10個の番号付きの枠(「/presets」)に保存して呼び出せる。定型の頼みごとを“短縮ダイヤル”に登録するイメージ
- モデル、推論の強さ、速さ、権限(どこまで自動で操作してよいか)を、「/model」「/permissions」の後ろに書くだけでその場で切り替えられる
- 企業向けのMCP(AIと社内システムや外部サービスをつなぐ仕組み)への接続で、Codexのアカウントの権限や専用のサインインを使えるように
- 会話の記録が圧縮された長いセッションを再開するときの失敗を修正し、保存していた設定も元どおりに戻るように
- Windowsで、会社のネットワークに多い「プロキシ」の認証に、サインイン中のユーザーの資格情報で自動的に対応
このほか、対応した端末での画像のプレビュー表示や、一部のリモート実行でのパスワードなどの伏せ字化、Amazon Bedrock(AWSのAIサービス)向けの設定ガイドを最初から使えるようにする変更も含まれています。会社のパソコンからCodex CLIを使おうとして、社内のプロキシでつまずいていた人には特にうれしい修正です。なお、日本時間10月24日朝の時点で、GitHubには0.165.0の試験版(アルファ版)も出ていますが、正式版の最新は0.164.0です。
公式の紹介動画
19日目の投稿そのものに関する公式動画はありませんでしたが、同じ朝(日本時間10月24日午前7時ごろ)に、OpenAIの公式YouTubeチャンネルでdotsの使い方を紹介する動画「Hunt bugs with your dot」(約5分)が公開されました。OpenAIのエンジニアが、自分のdotにSNSや利用者からの報告を集めさせ、ChatGPT Spaceの表で不具合を管理し、Codexで調査と修正まで進める様子が紹介されています。同じ動画は、ChatGPTの公式Xでも「dotsを使って、より良いdotsを作っている」という言葉とともに投稿されています。
キャッシュの改善とCodex CLIの更新については、公式の紹介動画は見つかりませんでした。
ビジネス利用者にとっての意味
19日目の内容を仕事に生かすなら、次の点を押さえておくとよさそうです。
- dotsの通話がつながりにくくて使うのをやめていた人は、もう一度試してみる価値がある。外出先から声で指示を出す使い方が現実的になる
- CodexやChatGPT Workでは、ふだんは軽めの設定で進め、難しい場面だけ考える深さを上げる、という使い分けがしやすくなった。切り替えのたびに利用枠を余分に減らす心配が小さくなる
- 社内のWindowsパソコンでCodex CLIを使いたい場合は、0.164.0以降に更新すると、社内プロキシの認証で止まる問題が解消される可能性がある
- 毎日のように頼む定型の作業(報告書の下書き、決まった形式のチェックなど)は、「/presets」に登録しておくと、担当者が替わっても同じ指示を再現しやすい
まとめ
Codexの「28日間、毎日改善かフルリセット」宣言の19日目は、日本時間10月24日午前8時12分ごろの発表で、2日続いたフルリセットのあとの改善の日になりました。dotsの通話がより速くつながるようになり、CodexとChatGPT Workでは会話の途中で考える深さを変えてもキャッシュが切れなくなり、Codex CLIも更新されています。本人が「小さな更新」と呼ぶとおり派手さはありませんが、待ち時間や利用枠の“目に見えない無駄”を減らす、実務向きの改善です。これで改善は12回、全員向けのリセットは8回、残りは9日です。引き続き追いかけます。
参考リンク
- X(@thsottiaux):Day 19/ Small updates. Calls connect much faster for dots, changing reasoning in codex & work mid conversation does not invalidate cache anymore and a we’ve also updated the codex cli.
- X(@thsottiaux):On codex cli updates. We’ve added reusable prompt presets, inline model and permission settings, and enterprise MCP sign-in.
- X(@ChatGPT):We’re using dots to build better dots.
- YouTube(OpenAI):Hunt bugs with your dot
- GitHub(openai/codex):Release 0.164.0
- ChatGPT Learn:ChatGPT & Codex changelog
- GitHub(openai/codex):Changing reasoning level results in cache miss
- OpenAI Developer Community:Unable to connect to dot calls across mobile, web and desktop
- OpenAI Developer Community:Another Reset: Day 18 of 28 days of Quality of Life improvements and/or a full Reset
- AI共創広場:Codex「28日間の改善」18日目はDecisions API正式版などを挙げつつフルリセット——Open ResponsesはLinux Foundation系団体へ、UberはChatGPT Workを全社導入
- AI共創広場:Codex「28日間の改善」17日目はまたフルリセット——あわせて“事故の前に”セキュリティ向け「Daybreak Blue」の申請を呼びかけ
- AI共創広場:Codex「28日間の改善」15〜16日目はフルリセットのあと“キャッシュ切れ”を解消——古い会話に戻っても割高にならず、APIには12時間キャッシュ
- AI共創広場:Codex「28日間の改善」12日目は同じプランで使える量が実質アップ——AIの“読み直し”を減らす工夫、GPT-6 Astra Proも強化
- AI共創広場:Codex「28日間の改善」5日目は次の一言をAIが先読み——Pro向け「Composer predictions」とスマホで作れる「dots」
- AI共創広場:米OpenAIが常時稼働エージェント「dots」発表——クラウド専用PCで24時間、Teams・Slack対応
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