Strataとは?——1,250億パラメータ級AIを家庭用PCで動かす無料エンジン、データを外に出さないローカルAIの始め方

コラム

「Strata(ストラタ)」という名前のAIツールが、ここ数日、国内外のXで大きな話題になっています。ふだんはデータセンターの高価なサーバーで動かすような「1,250億パラメータ級」の大型AIモデルを、ゲーム用の家庭向けパソコンで動かせるようにする、無料のオープンソースソフトです。

公式サイトは「Nothing leaves your PC(データはあなたのPCから出ません)」とうたっており、社外のクラウドに送りたくない資料をAIで扱いたい人から注目されています。GitHubで公開された最初の版(v0.1.0)は日本時間2026年9月25日(金)午前2時ごろに出され、10月11日(日)午後11時40分ごろには最新版v0.1.43が公開されるなど、ほぼ毎日のように更新が続いています。

この記事では、Strataとは何か、何ができるのか、必要なパソコン、始め方、注意点、そして中小企業や個人事業主にとっての使いどころを、専門知識がなくてもわかるように整理します。

Strataとは——“大きなAIを自宅のPCで動かす”ための土台

Strataは、AIモデルそのものではなく、AIモデルを動かすための「推論エンジン」と呼ばれるソフトです。たとえるなら、大きな料理レシピ(AIモデル)を、家庭の小さな台所(一般のパソコン)でも作れるように段取りしてくれる“腕のいい調理場の仕組み”のようなものです。

公式のGitHubによると、Strataが動かすのはAlibabaのQwenチームが公開している大型モデル「Qwen3.8-Flash-Next」です。会話、文章作成、プログラミング、画像の読み取りができ、ほかのアプリやAIエージェントともつなげられると説明されています。開発者はNiko Veit氏(Xアカウント @coldniko)で、エンジンはMITライセンスで公開されています。大手AI企業の製品ではなく、個人・コミュニティ発のプロジェクトである点は押さえておきましょう。

ポイントは、グラフィックボード(GPU)のメモリ、パソコン本体のメモリ、SSDを協調させて使う設計です。モデル全体をGPUに載せきれなくても、必要な部分を順番に読み込みながら動かすことで、12GBのビデオメモリでも大型モデルを動かせるようにしています。

どのくらい速いのか

公式READMEでは、ふつうのゲーミングPC2台での実測値が公開されています。NVIDIA RTX 5070(12GB)とメモリ64GBの構成では、最も軽いサイズで1秒あたり94トークン、標準的なサイズでも50〜60トークン台で回答を書くとされています。トークンは文字のかたまりの単位で、公式は「1秒60トークンは人が読むより速い」と説明しています。

AMD Radeon RX 9070 XT(16GB)の構成でも、1秒あたり44〜60トークンの数値が示されています。ただし、これらは開発者側の測定条件での数字です。パソコンの構成や、会話の長さによって速さは変わります。

必要なパソコンと料金

Strata自体は無料で、公式GitHubから誰でもダウンロードできます。月額料金や有料プランは、公式サイトとGitHubを確認した範囲では見当たりませんでした(開発支援のための寄付窓口は案内されています)。一方で、ある程度高性能なパソコンが必要です。公式に書かれている条件は次のとおりです。

項目公式に書かれている条件
グラフィックボードNVIDIA GeForce RTX 20〜50シリーズ、またはAMD Radeonの対応機種。ビデオメモリ(VRAM)12GB以上
メモリ(RAM)32GB以上(64GBあれば全サイズが動く)
空き容量約80GB(SSD推奨)
OSWindows 10/11 または Linux
料金無料(エンジンはMITライセンスのオープンソース)

同じモデルにも、圧縮の度合いが違う複数の「サイズ」があり、パソコンのメモリ量に応じて選びます。小さいサイズほど速く、大きいサイズほど少し賢い、という関係です。

パソコンのメモリ公式が勧めるモデルのサイズ
メモリ(RAM)32GBCoder(プログラミング向けの軽量版)
48GBIQ2_XS(または最速のQ2_0)
64GBIQ2_XS(推奨)、またはIQ3_XXS/IQ3_S
96GB以上IQ3_S など大きめのサイズ

古いGPUやIntel Arcなどへの対応は、コミュニティが試験的に検証している段階とされています。

始め方——AIに“インストールして”と頼むこともできる

公式が案内している始め方は2通りです。1つめは、Claude CodeやCursor、Codexなどのコーディング支援AIを使っている人向けで、決められた一文(GitHubのURLと手順書を指定する指示)を貼り付けると、AIがパソコンのGPU・メモリ・空き容量を確認し、合うモデルを選んでインストールと起動までしてくれるというものです。

2つめは自分で行う方法です。GitHubからファイルをダウンロードして展開し、Windowsなら「START-HERE.bat」をダブルクリック、Linuxなら「setup.sh」を実行します。いくつかの質問(モデルとサイズ、どれだけ長い文章を覚えておくか、画像を読ませるか)にEnterキーで推奨の答えを選ぶと、約70GBのモデルをダウンロードして起動し、ブラウザでStrataの画面(http://127.0.0.1:8080)が開きます。

公式は、起動中の1〜3分ほどはパソコンが重くなったり反応しなくなったりすることがあるが正常だと注意しています。GitHubには日本語版のREADMEも用意されています。画面がどの言語に対応しているかは公式に明記がないため、本記事では確認できていません。

データの扱いとほかのツールとの連携

公式サイトは、セットアップ後はモデルも会話もそのパソコンの中に保存され、データは外に出ないと説明しています。顧客情報や社内資料など、クラウドのAIサービスに入れるのをためらう情報を扱いたい場合に、検討の価値がある仕組みです。ただし、最初のモデルのダウンロードにはインターネット接続が必要です。

また、OpenAIやAnthropicのAPIと互換性のある窓口をパソコン内に用意するため、CursorやClaude Code、Codexといった開発ツールの接続先をStrataに向けて使うこともできると案内されています。社内で使っているAI連携ツールを、外部サービスではなく手元のAIで動かす、といった使い方が考えられます。

注意しておきたい点

  • 個人・コミュニティ発のオープンソースで、バージョンは0.1台です。更新が非常に速く、設定の初期値が版ごとに変わることもあります。業務で使う場合は、検証用のパソコンから始めるのが安全です。
  • 動かすモデル(Qwen3.8-Flash-Next)はAlibaba側が公開しているもので、その利用条件はStrataのMITライセンスとは別です。商用利用の前にモデル側の条件も確認しましょう。
  • 大量のメモリとディスクを使います。ほかの業務アプリと同じパソコンで動かすと、動作が重くなる可能性があります。
  • 公開されている速度は開発者やユーザーの測定値です。自分のパソコンで試すには、公式が用意する計測ツール(BENCH.bat)で確かめるのが確実です。
  • クラウドの最新AIと比べた回答の質は用途によって差があります。重要な判断や外部に出す文章は、人が必ず確認しましょう。

ビジネスでの使いどころ

専門知識がなくても、次のような場面でStrataのような“手元で動くAI”は役に立つ可能性があります。いずれも、まずは小さな作業から試すのがおすすめです。

  • 社外秘の資料の要約や下書き:契約書のたたき台、社内会議メモの整理など、クラウドに出したくない文書をパソコン内だけで処理する。
  • 顧客情報を含む文面作成:問い合わせへの返信案や、顧客ごとの提案文の下書きを、情報を外に出さずに作る。
  • 月額費用をかけずにAIを試す:すでにゲーミングPCや高性能なPCがあれば、追加のサブスクリプションなしでAIの使い勝手を社内で検証できる。
  • 社内の“デジタル部下”の土台:ITに詳しい担当者がいれば、既存のAI連携ツールの接続先を手元のAIにして、社内専用のアシスタントを作る足がかりにできる。

一方で、導入や設定にはある程度パソコンの知識が必要です。社内に詳しい人がいない場合は、IT担当者や外部の協力者と一緒に、検証用の1台から始めると安心です。

公式Xで公開された紹介動画

開発者のNiko Veit氏は日本時間9月27日(日)午後11時16分ごろ、自身のXで「ビデオメモリ12GBでQwen3.8-Next-Flashが毎秒48トークン、最新エンジン更新で45分間作業した」という趣旨の動画つき投稿を公開しています。

まとめ

Strataは、大型AIモデル「Qwen3.8-Flash-Next」を、12GB以上のビデオメモリを持つ家庭用パソコンで動かせるようにする無料のオープンソースエンジンです。データをパソコンの外に出さずにAIを使える点、月額費用がかからない点が大きな魅力で、公開から3週間足らずで国内外の話題を集めています。

一方で、必要なパソコンの性能は高めで、ソフトもまだ0.1台の若いプロジェクトです。業務で使うなら、検証用の1台で、社外秘ではない資料から試し、回答の質と速さを自分の目で確かめるところから始めましょう。ローカルAIの別の選択肢として、当サイトのGoogleのMac向けローカルAI「AI Edge Foresight」やiPhoneをMacの外付けGPUのように使う「Backburner」の記事もあわせてどうぞ。

参考リンク

この記事を書いた人
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毎日20時間以上AIの実践・研究に没頭するITエンジニア。20年以上にわたり、オンラインゲームや生活関連など幅広いジャンルのオウンドメディアで執筆・編集長を歴任。現在は上場企業グループの代表取締役を務め、複数の事業者団体で理事を兼務する経営者でもある。テクノロジーの最前線に身を置きつつ、地域の商店街や神社の運営にも深く携わるなど、地域活性化にも尽力。圧倒的な現場経験とITの専門知識、経営者の視点から、信頼性の高い有益な情報を発信している。
Olive株式会社 代表取締役

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