Adobe代替を目指す無料アプリ群「ArtCraft Crafting Apps」とは?7本の対応表・料金比較・試し方と注意点

コラム

Photoshop、Illustrator、Premiere Pro、After Effectsなど、アドビの主要ツール7本の「代わり」を目指すオープンソースのアプリ群が公開され、海外で大きな話題になっています。米ジョージア州アトランタを拠点とする開発者ブランドン・トーマス氏が率いるArtCraftチームの「Crafting Apps(クラフティング・アプリ)」です。

トーマス氏は2026年10月3日(日本時間23時ごろ)、自身のXで「アドビのアプリ7本の代替をRustで作った。オープンソースだ」と投稿し、各アプリのGitHubへのリンクを公開しました。アプリ本体は無料で、ソースコード(設計図にあたるプログラム)も誰でも見られる形で公開されています。

この記事では、エンジニアでない方にも分かるように、Crafting Appsとは何か、アドビのどの製品に対応するのか、アドビの公式料金との比較、試し方、そして使う前に知っておきたい注意点を順番に整理します。

開発者がXで公開した発表投稿

こちらが、トーマス氏(@echelon)による最初の発表投稿です。画像付きの短い投稿で、続く返信に7本のアプリそれぞれのGitHubページへのリンクが並んでいます。なお、記事執筆時点(2026年11月2日)で、Crafting Appsを紹介する動画は公式のXアカウントでも公式のYouTubeチャンネルでも見つかりませんでした。

ArtCraftのCrafting Appsとは?

ArtCraftはもともと、画像や動画をAIで作るための「アーティスト向けの統合スタジオ」として開発されているオープンソースのツールです。開発元のGitHub組織「storytold」には、このArtCraft本体のほか、2026年9月末から10月1日にかけて、アドビ製品の代わりを目指す7本のアプリが相次いで登録されました。これらのアプリ群が「Crafting Apps」と呼ばれています。

公式サイトによると、アプリはすべてRust(ラスト)というプログラミング言語で作られた「ネイティブアプリ」です。ネイティブアプリとは、ブラウザの中ではなく、パソコンに直接インストールして動かすタイプのアプリのこと。Windows、macOS、Linuxで動き、多くはブラウザ上でも試せます。

米テックメディアのArs Technicaは、トーマス氏がAnthropicのAI「Claude Opus 5.5」を使ってこれらのアプリを開発したと報じています。各READMEでは「クリーンルーム方式」をうたい、公開された仕様と実際の動作の観察だけをもとに作っており、アドビのプログラムを解析・流用してはいないと説明しています。

ライセンスはMITとApache-2.0のデュアルライセンスです。どちらも商用利用を含めて広く利用・改変を認める、オープンソースの代表的なライセンスです。なお、公式サイトのアプリ一覧はその後も増え、記事執筆時点ではOffice系やCAD、音楽制作なども含む15本が並んでいますが、この記事ではアドビ対応の7本に絞って紹介します。

アドビ製品とCrafting Appsの対応表

7本のアプリと、それぞれが置き換えを目指すアドビ製品を表にまとめました。「状況」は公式サイトのアプリ一覧の表示、「READMEでの自己評価」は各アプリのGitHub上の説明書(README)に開発チーム自身が書いている数字です。第三者が検証した数字ではない点にご注意ください。

アドビ製品Crafting Apps公式サイトでの状況READMEでの自己評価対応環境最新版(2026年11月2日時点)
PhotoshopPhotoCraft(画像編集)Early alpha(初期アルファ版)「まだ日々のプロの仕事でPhotoshopを置き換えられる段階ではない」と明記Windows・macOS・Linux・ブラウザv0.19.0
IllustratorVectorCraft(ベクターイラスト)In development(開発中)2026年10月10日時点でアルファ版。主要機能の約88%が存在し、実務向けの完成度は約65%Windows・macOS・Linux・ブラウザv0.20.0
Premiere ProFilmCraft(動画編集)In development(開発中)アルファ版。機能の幅は約86%、実務での使える度合いは約56%Windows・macOS・Linux(ブラウザ版なし)v0.16.0
LightroomLightCraft(写真管理・RAW現像)In development(開発中)アルファ版。機能数ベースで約82%Windows・macOS・Linux・ブラウザv0.17.0
Acrobat ProPdfCraft(PDF編集)※公開当初の名称はPrintCraftEarly alpha(初期アルファ版)アルファ版。日常業務への対応度は約55%Windows・macOS・Linux・ブラウザv0.17.0
After EffectsEffectCraft(モーショングラフィックス・映像効果)In development(開発中)アルファ版。追跡している機能の約91%が存在し、本格的な制作への対応は約45%Windows・macOS・Linux・ブラウザv0.20.0
InDesignDesignCraft(ページレイアウト)In development(開発中)ロードマップ上の段階は「プレアルファ(アルファ版より前)」Windows・macOS・Linux・ブラウザv0.16.0

出典:ArtCraft公式サイトのアプリ一覧、各アプリのGitHubリポジトリ(README・リリースページ)。最新版はいずれも2026年11月2日(日本時間)に公開されたものです。バージョン番号が0.x台であることからも分かるとおり、7本とも正式版(1.0)には達していません。

アドビの公式料金と比べるとどうなる?

Crafting Apps本体は無料です。一方、アドビの製品は月額制のサブスクリプションです。アドビの日本公式サイトに掲載されている個人向けの通常価格(年間プラン・月々払い、税込)と並べてみました。

アドビ製品アドビ日本公式の通常価格(年間プラン・月々払い、税込)Crafting Appsの対応アプリCrafting Appsの価格
Photoshop 単体プラン月額3,280円PhotoCraft無料
Illustrator 単体プラン月額3,280円VectorCraft無料
Adobe Premiere 単体プラン月額3,280円FilmCraft無料
Lightroom プラン月額1,480円LightCraft無料
Acrobat Pro月額2,530円PdfCraft無料
After Effects 単体プラン月額3,280円EffectCraft無料
InDesign 単体プラン月額3,280円DesignCraft無料
Creative Cloud Pro(20以上のアプリ+生成AI)月額9,080円7本すべて無料

出典:Adobe Creative Cloudのプラン、価格、メンバーシップ(2026年11月2日に確認)。アドビは新規向けの割引キャンペーンを行うことがあり、価格は変わる場合があります。

7本を単体プランで別々に契約すると月額の合計は20,410円になり、まとめて使うならCreative Cloud Pro(月額9,080円)の方が割安です。年間にするとCreative Cloud Proで約10.9万円。これが「無料」になる可能性がある、という点がCrafting Appsが注目を集めている大きな理由です。

ただし、価格だけで比べるのは公平ではありません。アドビ製品には生成AI機能「Adobe Firefly」やクラウド保存、サポートが含まれますが、Crafting Appsは後述のとおり開発途中で、生成AI機能はPhotoCraftのREADMEでも「まだ足りない部分」として挙げられています。また、ITmedia NEWSによると、開発者はCrafting Apps自体では収益を得ておらず、同じチームが別途提供するArtCraft本体のAI画像・動画生成サービスは、利用にクレジットが必要な仕組みになっています。

試し方:ランチャーでまとめて入れるのが手軽

いちばん手軽なのは、公式サイトのアプリ一覧ページから「ArtCraft Launcher(ランチャー)」をダウンロードする方法です。ランチャーは、スマートフォンのアプリストアのように、Crafting Appsをまとめてインストールし、最新版への更新も自動で面倒を見てくれるアプリです。公式サイトでも推奨されており、使っているパソコンのOSやCPUの種類に合ったファイルを自動で選び、ダウンロードしたファイルが改ざんされていないかの確認(チェックサム検証)も行ってくれます。

特定のアプリだけ試したい場合は、公式サイトの各アプリのページからそのアプリだけを入れることもできます。各READMEでも、初めての人には公式サイトの各アプリページからのダウンロードが「いちばん簡単な方法」と案内されています。

Windowsでは一般的なインストーラーか、インストール不要で解凍して使うzip版を選べます。Macでは、Apple製チップとIntel製チップの両方で動くインストーラー(DMG)が配布され、アップルの審査(公証)を通ったものと説明されています。Linux向けにも複数の形式が用意されています。

インストールせずに雰囲気だけ見たい場合は、ブラウザ版を試す方法もあります(FilmCraftはブラウザ版なし)。いずれの場合も、ダウンロードは公式サイト(getartcraft.com)か、開発元のGitHub(storytold)から行いましょう。

使う前に知っておきたい注意点

1つ目は、どのアプリもまだ開発途中だということです。PhotoCraftのREADMEは「まだ日々のプロの仕事でPhotoshopを置き換えられる段階ではない」と自ら明記しています。米Gizmodoによると、トーマス氏自身もHacker News(海外の技術者向け掲示板)で、アプリは「まだ準備ができているとはとても言えない」と述べています。いきなり仕事の本番で使うのは避け、試用にとどめるのが安全です。

2つ目は、アドビのファイルとの互換性です。PhotoCraftはPSD形式(Photoshopのファイル)を開いて保存でき、テスト用ファイル309件中307件で見た目を保ったまま保存し直せたとしていますが、米InfoQは同プロジェクトのロードマップを引用し「書き出したPSDがPhotoshopで確実に読み込まれる段階ではない」と伝えています。FilmCraftはPremiere Proのプロジェクトファイル(.prproj)をまだ開けず、EffectCraftもAfter Effectsのプロジェクト形式や専用プラグインには対応していません。VectorCraftも、Illustratorの.aiファイルを確実にやり取りできることを今後の課題に挙げています。取引先とアドビ形式のファイルをやり取りする仕事では、特に注意が必要です。

3つ目は、商標と法的なリスクです。各READMEには、Photoshopなどの名称はアドビの商標であり、このプロジェクトはアドビと提携しておらず、支援や推奨も受けていない独立したプロジェクトであると明記されています。ITmedia NEWSも、開発チームがアドビとの提携や支援はないとしていると伝えています。一方、Ars Technicaは、見た目や操作感を似せることが「トレードドレス(製品の外観に関する権利)」の問題になりうる可能性を指摘しています。今後、名称や見た目が変わる可能性も頭に入れておくとよいでしょう。

4つ目は、AIで短期間に作られたソフトであることです。最初のリポジトリ公開から約1か月で7本から15本へと広がった開発スピードは驚異的ですが、長年使われてきたソフトと同じ安定性があるとは限りません。大事なデータは必ず別に保存しておき、作業中のファイルが壊れても困らない形で試しましょう。

どんな人に向いている?

現時点で向いているのは、まず「アドビ製品を契約するほどではないが、ちょっとした画像の加工やPDFの整理を無料でしたい」個人や小規模事業者の方です。PDFの結合・分割や、簡単な写真の補正など、日常のちょっとした作業から試すとよいでしょう。

次に、AIを使ったソフト開発の今を知りたい方です。「AIでどこまでのソフトが作れるのか」を実物で確かめる材料として、非常に分かりやすい例です。また、アドビ製品の操作に慣れていて、似た操作感の無料ツールを学習用・趣味用に探している方にも、試す価値があります。

一方、取引先とアドビ形式のファイルを日常的にやり取りしている方や、納期のある制作業務をしている方は、現時点ではアドビ製品の代わりとして乗り換えるのは早いと言えます。開発の進み具合を見守りながら、サブの道具として触ってみる程度がおすすめです。

非公式の紹介動画

公式の紹介動画は見つかりませんでしたが、海外のYouTubeチャンネル「RoboNuggets」が、7本のアプリを試す動画を公開しています。開発チームとは関係のない非公式の動画で、タイトルは「誰かがアドビを無料で作り直し、Claudeがそれをすべて動かせる(7本のアプリを検証)」という意味の英語です。内容は英語です。

まとめ

ArtCraftのCrafting Appsは、Photoshop、Illustrator、Premiere Pro、Lightroom、Acrobat Pro、After Effects、InDesignという7本のアドビ製品の代わりを目指す、無料のオープンソースアプリ群です。アドビのCreative Cloud Proが月額9,080円(税込)であることを考えると、無料で使える選択肢が増えること自体は大きなニュースです。

ただし、7本とも正式版前のアルファ段階で、開発チーム自身が「まだプロの仕事の置き換えにはならない」と認めています。アドビ形式のファイルとの互換性や、商標・外観をめぐる今後の動きも未知数です。まずはランチャーやブラウザ版で気軽に触ってみて、AIがソフト開発をどこまで変えつつあるのかを体感してみてはいかがでしょうか。

参考リンク

この記事を書いた人
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毎日20時間以上AIの実践・研究に没頭するITエンジニア。20年以上にわたり、オンラインゲームや生活関連など幅広いジャンルのオウンドメディアで執筆・編集長を歴任。現在は上場企業グループの代表取締役を務め、複数の事業者団体で理事を兼務する経営者でもある。テクノロジーの最前線に身を置きつつ、地域の商店街や神社の運営にも深く携わるなど、地域活性化にも尽力。圧倒的な現場経験とITの専門知識、経営者の視点から、信頼性の高い有益な情報を発信している。
Olive株式会社 代表取締役

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