Project Mayaとは?——巨大AI「GLM-5.3-Flash」やDeepSeek最新モデルを自分のPCで動かす無料エンジン、料金比較と注意点

コラム

「Project Maya(プロジェクト・マヤ)」は、ふつうはデータセンターの大型サーバーで動かすような巨大AIモデルを、手元のパソコンで動かすための無料ソフトです。個人開発者のPeasant Smith氏(GitHub名 mw00)が中心となって開発し、2026年10月7日(日本時間)にGitHubで公開されました。

最初は中国Z.ai(Zhipu AI)の「GLM-5.3-Flash」(3210億パラメータ)専用でしたが、日本時間10月20日未明に公開されたv1.1.16で、DeepSeekの最新モデル「DeepSeek-V4.1-Flash-1017」にも対応しました。同日午後3時半ごろにはv1.1.17も公開され、公開から約2週間で50本を超える更新が出ています。

この記事では、Project Mayaとは何か、何ができるのか、必要なパソコンと料金、日本からの使い方、そしてITに詳しくない方がビジネスで検討する際の注意点を整理します。

公式Xで公開された紹介動画

開発者のPeasant Smith氏は日本時間10月20日(火)午前2時21分、DeepSeek-V4.1-Flash-1017への対応を伝えるv1.1.16の告知ポストを、約28秒の動画付きで公開しています。

Project Mayaとは

Project Mayaは、AIモデルそのものではなく、AIモデルを動かすための「推論エンジン」と呼ばれるソフトです。料理にたとえると、プロ用の巨大な厨房でしか作れなかった料理(巨大AIモデル)を、家庭の台所(手持ちのパソコン)でも作れるように段取りしてくれる仕組みにあたります。

しくみの要点は、AIの中身を「よく使う部分はGPU(グラフィックボード)のメモリ、その次はパソコン本体のメモリ、残りはSSD」と3段に分けて置き、会話に合わせて入れ替えることです。GLM-5.3-Flashは、3210億個のパラメータのうち、1回に実際に働くのは約180億個だけという「専門家チーム型」(MoE)の設計なので、必要な専門家だけを手元に呼び出す方式と相性がよいのです。パソコンのGPU・CPU・メモリ・SSDを測って、自動で設定を合わせる機能もあります。

ソフトはMITライセンスのオープンソースで、開発者は「データがあなたのマシンの外に出ることはない」と説明しています。土台には、当サイトでも紹介した無料エンジン「Strata」とllama.cppの技術が使われていると明記されています。Strataについては「Strataとは?——1,250億パラメータ級AIを家庭用PCで動かす無料エンジン」で詳しく解説しています。

なお、大手AI企業の製品ではなく、個人とコミュニティが進めるプロジェクトです。また「Project Maya」という名前は、インドの短編アニメ作品や、AIエージェントを使った起業の解説サイト(projectmaya.ai)などにも使われていますが、本記事で扱うのはGitHubの「mw00/project-maya」です。

何ができるのか

公式のREADMEによると、主な機能は次のとおりです。

  • ブラウザでのチャット:インストール後、パソコン内のチャット画面(http://127.0.0.1:8080)で会話できる。会話履歴はブラウザ内に保存
  • 画像の読み取り:チャットに画像を添付して内容を質問できる
  • 考える深さの切り替え:「Off/Low/High/Max」の4段階
  • ほかのツールとの接続:OpenAIやAnthropicと同じ形式の窓口を用意するため、Claude Codeなどのコーディング支援ツールの接続先にできる
  • 複数の依頼を同時処理:GLM-5.3-Flashでは最大8件を並行して処理でき、1台のパソコンを数人で使うことも想定
  • 監視画面:AIの動きとパソコンの状態(GPUのメモリの使われ方など)をリアルタイムで表示

最大で約100万トークン(分厚い資料の束に相当)の長い文脈を扱える点も、元のモデルの特長として挙げられています。

動かせるモデルと「圧縮版」の種類

巨大なモデルをそのまま家庭用パソコンに載せるのは難しいため、Project Mayaは元のモデルを小さく圧縮した独自版(量子化版)を用意しています。写真を高画質のまま少し軽いファイル形式に変えるイメージで、サイズが小さいほど手軽に動かせ、大きいほど元のモデルに近い答えになります。

モデルファイルの大きさ向いているパソコン
GLM-5.3-Flash Maya-S(標準)96.5GBメモリが比較的少ないパソコン
GLM-5.3-Flash Maya-S2494.7GBGPUのメモリが24GB以下のパソコン
GLM-5.3-Flash Maya-M116GBメモリに余裕があるパソコン(ツール操作やWeb画面のコード向けに調整)
GLM-5.3-Flash Maya-L156.3GB大容量メモリのパソコン
DeepSeek-V4.1-Flash-1017 Maya-S(標準)約340GB大容量のNVMe SSDを持つパソコン(メモリに入らない部分はSSDから読み込み)

DeepSeek-V4.1-Flash-1017は、Project Maya側の説明では7480億パラメータの大型モデルです。v1.1.17では、DeepSeek用の標準ファイルが合計約340GB(6ファイル)にまとめられました。DeepSeekのこの新モデル自体については、当サイトの「DeepSeekの新Flash「V4.1-Flash-1017」公開」で紹介しています。

開発者は日本時間10月18日、Hugging Faceで公開している圧縮版について、ダウンロード数が20万回を超えたとXで報告しています。

公表されている性能(開発者による測定)

Project Mayaの開発者は、GLM-5.3-Flashの圧縮版が元のモデル(FP8版)の正答率をどれだけ保っているかを、一般的な5つの評価テストで測った結果を公表しています。いずれも開発者自身による測定で、第三者の検証ではありません。数値は高いほど良く、テスト同士の数値は比べられません。

評価テスト(元モデルの値)Maya-SMaya-S24Maya-MMaya-L
ARC-Easy(87.2)86.285.8★ 86.586.0
ARC-Challenge(71.0)68.269.069.0★ 69.8
HellaSwag(88.5)87.584.886.8★ 88.5
WinoGrande(78.5)75.577.076.2★ 77.8
PIQA(87.0)86.286.285.0★ 87.0
5テストの平均(82.5)80.880.680.7★ 81.8
元モデルと同じ次の単語を選ぶ割合(%)83.383.186.2★ 90.0

★と色付きは各テストの1位です(数値はProject Maya発表)。

平均で見ると、元のモデルに対してMaya-Lは99.2%、Maya-SとMaya-Mは97.9%、Maya-S24は97.7%の正答率を保っているとされます。ただし、これらは選択式の基本的なテストで、文章作成や業務の自動化といった実務での品質を直接示すものではありません。「次の単語が元モデルと同じになる割合」はMaya-Sで83%ほどなので、圧縮による答えの変化はある程度あると考えておきましょう。DeepSeek用のMaya-Sは、この割合が92.6%(v1.1.17の再測定では93.5%)と発表されています。

速さについては、READMEに利用者からの実測報告が並んでいます。一部を抜き出しました(いずれもGLM-5.3-Flash、回答を書き出す速さ)。

パソコンの構成(報告者の環境)圧縮版1秒あたりの速さ
RTX 4090(24GB)×4台、メモリ62GBMaya-S24118トークン
RTX PRO 6000 Blackwell(96GB)×1台、メモリ61GBMaya-M81.0トークン
RTX 5090(32GB)×1台、メモリ96GBMaya-M30トークン以上
RTX 3090(24GB)×1台、メモリ128GBMaya-S2426.0トークン
RTX 4090(24GB)×1台、メモリ192GB、Windows 11Maya-L16.4トークン
ノートPC(RTX 5090 Laptop 24GB)、メモリ64GB、Windows 11Maya-S2414.5トークン

トークンは文字のかたまりの単位です。同じGPUでも、メモリの量や設定、会話の長さで速さは大きく変わります。購入の判断材料にする場合は、自分の環境で付属の計測機能を試すのが確実です。

必要なパソコンと始め方

項目公式READMEに書かれている条件
GPUNVIDIA製(V100、RTX 20シリーズ以降)を1台〜最大16台。AMD製の一部機種は試験対応
メモリ(RAM)32GBから動作。多いほど速い
保存場所高速なNVMe SSD(GLM用Maya-Sで約100GB、DeepSeek用Maya-Sで約350GB)。ハードディスクは不可
OSLinux(標準)。Windows 10/11は試験対応。WSL2は非対応
料金無料(MITライセンス)。開発支援の寄付窓口あり

インストールは、GitHubからファイルを取得して「setup.sh」(Windowsでは「START-MAYA.bat」)を実行し、いくつかの質問にEnterキーで推奨の答えを選ぶ流れです。モデルのダウンロードに加えて、ソフトの組み立てに20〜40分ほどかかるとされています。起動中はパソコンのメモリの大半(約6GBを除く)をProject Mayaが確保するため、ほかのアプリが使えるメモリは少なくなります。

Linuxでのコマンド操作が前提になる場面も多く、ITに詳しくない方がいきなり自分で導入するのは簡単ではありません。社内のIT担当者や詳しい協力者と一緒に試すのが現実的です。

料金と、クラウドのAIとの比較

Project Mayaとモデルは無料で使えます。かかるのは、高性能なパソコンの購入費(すでに持っていれば不要)と電気代です。一方、同じGLM-5.3-FlashやDeepSeekのモデルは、開発元のクラウドAPIで従量課金でも使えます。参考までに、各社の公式料金ページ(日本時間10月20日時点)で100万トークンあたりの標準料金を並べました。

使い方提供元入力出力備考
Project Maya(自分のPC)個人開発のオープンソース無料無料パソコンの購入費・電気代は別
GLM-5.3-Flash(API)Z.ai0.15ドル0.50ドルキャッシュ済み入力は0.03ドル
DeepSeek-V4.1-Flash-1017(API)DeepSeek0.15〜0.30ドル0.60〜1.20ドル時間帯で変動(安い方がオフピーク)
Claude Sonnet 5.5Anthropic2ドル10ドルキャッシュ読み取りは0.10ドル
GPT-6.1 SolOpenAI2.00ドル10.00ドル短い文脈の場合
Gemini 4 ArgonGoogle2.00ドル10.00ドル11月30日までの価格。12月1日から4.00ドル/20.00ドル

元のモデル自体がクラウドでもかなり安いため、「料金を節約したい」だけなら、高価なGPUをそろえるよりAPIのほうが安く済むケースも多いはずです。Project Mayaの価値は料金よりも、「データを社外のサーバーに送らずに大型AIを使える」点にあると考えるのがよいでしょう。

日本から使える?日本語は?

Project MayaはGitHubで公開されている無料ソフトなので、日本からも制限なくダウンロードできます。地域による利用制限の記載は見当たりませんでした。国内でもXで試した報告が複数投稿されています(利用者の投稿)。

一方、READMEや説明書は英語のみで、日本語版の案内は確認できませんでした。また、GLM-5.3-Flashの公式モデル説明ページで対応言語として挙げられているのは英語と中国語で、日本語の性能は公表されていません。日本語の資料やメールで使う場合は、実際の文書で品質を確かめてから判断しましょう。

ビジネスでの使いどころ

次のような場面で、Project Mayaのような「手元で動く大型AI」が検討の候補になります。

  • 社外秘の資料の要約・下書き:契約書のたたき台や会議メモの整理など、クラウドに出したくない文書を社内のパソコンだけで処理する
  • 社内専用の「デジタル部下」の土台:OpenAI・Anthropic形式の窓口を使い、社内のAI連携ツールの接続先を手元のAIに切り替える
  • 数人で1台を共有する:最大8件の同時処理を生かし、高性能なパソコン1台を部署のAI窓口にする
  • 新しいオープンモデルを早めに試す:DeepSeekの新モデルに数日で対応したように、話題のモデルを自社環境で検証する

いずれも、まずは社外秘ではない資料と検証用の1台で、回答の質と速さを確かめるところから始めるのがおすすめです。

使う前の注意点

  • 公開から約2週間の若いプロジェクト:ほぼ毎日更新され、WindowsやAMD対応は試験段階です。業務の本番利用は慎重に
  • 開発元は個人とコミュニティ:大手企業のようなサポートや品質保証はありません
  • 高い要求スペック:大容量のメモリと高速SSDが必要で、起動中はほかの作業が重くなります
  • 圧縮による品質の変化:元のモデルと答えが変わることがあります。重要な判断や外に出す文章は必ず人が確認を
  • 追加部品のライセンス:高速化のオプション「DFlash2」の部品は非商用ライセンス(CC BY-NC-ND 4.0)です。商用で使う場合は対象外にするなど確認が必要です
  • 安全面:拒否を減らすよう改変した試験版のモデルも選べます。AnthropicはGLM-5.3について、悪用につながる能力と安全策の弱さを指摘しており、社内で使う場合は利用ルールを決めておきましょう
  • 外部からの接続:別の端末から使えるように設定する場合、公式は必ずAPIキー(合言葉)を設定するよう案内しています

まとめ

Project Mayaは、3210億パラメータのGLM-5.3-Flashや、DeepSeekの最新モデルDeepSeek-V4.1-Flash-1017を、手持ちのパソコンで動かすための無料エンジンです。データを外に出さずに大型AIを使える点が最大の魅力で、公開から2週間ほどで利用者と協力者を集め、急速に機能を増やしています。

一方で、要求されるパソコンの性能は高く、導入にも専門知識が必要な若いプロジェクトです。料金面だけならクラウドAPIのほうが安い場合も多いため、「社外に出せない情報をAIで扱いたい」という目的がはっきりしているときに、IT担当者と一緒に検証用の1台から試すのが現実的な第一歩です。

参考リンク

この記事を書いた人
この記事を書いた人

毎日20時間以上AIの実践・研究に没頭するITエンジニア。20年以上にわたり、オンラインゲームや生活関連など幅広いジャンルのオウンドメディアで執筆・編集長を歴任。現在は上場企業グループの代表取締役を務め、複数の事業者団体で理事を兼務する経営者でもある。テクノロジーの最前線に身を置きつつ、地域の商店街や神社の運営にも深く携わるなど、地域活性化にも尽力。圧倒的な現場経験とITの専門知識、経営者の視点から、信頼性の高い有益な情報を発信している。
Olive株式会社 代表取締役

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