Codex「毎日改善」宣言の最初の成果——GPTモデル約50%高速化と見張り役AI「Auto-review」無料化

コラム

OpenAIでCodexとChatGPTを率いるティボー・ソティオ(Thibault Sottiaux)氏が、日本時間10月5日の早朝に打ち出した「28日間、毎日ひとつ明確な改善を出す。出せない日はフルリセット」という公開の約束。その最初の成果が、さっそく2日続けて届きました。1日目は、主力のAIモデル「GPT-6 Astra」と「GPT-6.1 Sol」の標準の速さが約50%向上。2日目は、AIの操作を別のAIが見張る安全機能「Auto-review(自動レビュー)」が無料になりました。どちらもリセットではなく「改善」の日です。この記事では、何が変わったのか、誰が対象なのか、どう使えばよいのかを、AIを仕事で使うビジネスパーソン向けに整理します。宣言そのものの中身は、「毎日改善、できない日はフルリセット」宣言の解説記事で詳しく紹介しています。

1日目:GPT-6 AstraとGPT-6.1 Solが約50%高速に

最初の発表は日本時間10月6日の午前2時20分ごろ、ソティオ氏のXアカウント(@thsottiaux)から「Day 1/」と題して投稿されました。28日間の宣言を引用する形で書かれています。

内容を日本語にまとめると、「サブスクリプション(契約プラン)経由で使う場合のGPT-6 AstraとGPT-6.1 Solについて、標準の速さを約50%速くなるよう最適化した。OpenAIのすべての製品に加え、『Sign in with ChatGPT(ChatGPTアカウントでログイン)』に対応するパートナーのツール、たとえばOpenCode、Pi、Amp、Devinなども対象。利用者側の変更は不要で、2時間以内に体感できるはず」というものです。直後の返信では「毎秒30トークンだったところが、毎秒50トークンに達した」と補足しています。

「トークン」とは、AIが文章を組み立てるときに使う、細かな文字のかたまりのことです。毎秒30から50へ、というのは、AIが答えを「書き出す」スピードが上がったという意味です。料理店にたとえるなら、レシピも味も同じまま、厨房の手際が良くなって料理が出てくるまでの時間が短くなった、というイメージです。なお、数字の上では30から50は約1.7倍にあたりますが、ソティオ氏自身は「約50%速い」と表現しています。

対象は、ChatGPTの契約プランでCodexやChatGPT Workを使う場合と、ChatGPTアカウントでログインして使う提携ツールです。設定の変更は一切いりません。一方で、これは「書き出す速さ」の改善であり、調べものや確認を含む仕事全体の所要時間が同じ割合で縮むとは限りません。また、使える量(利用枠)についての変更は告知されていません。OpenAIの開発者フォーラムでは、ある利用者が自前の計測で「米国の日中は思ったほど速くなかったが、展開が進んだ翌朝は明らかに改善した」と報告しており、体感には時間帯や展開状況による差もありそうです。

2日目:見張り役AI「Auto-review」が無料に

2日目の発表は日本時間10月6日の午後4時13分ごろ。今度は「Day 2.1/」と題した投稿です。

要点は、「ChatGPTアカウントでサインインしているすべての利用者向けに、Auto-reviewを無料にした。設定の『権限(Permissions)』から『Auto-review』を選べば有効になる」「Auto-reviewは無料になり、プランの利用枠も消費しない」の2つです。ソティオ氏は続く返信で、設定の場所を「Settings → General → Permissions → Auto-review」と画面の画像つきで示し、「フルアクセスの代わりにAuto-reviewを使ってほしい。もうトレードオフ(どちらかを諦める選択)ではないし、安心して眠れる」とも書いています。

番号が「2.1」となっていることから、2日目にさらに続きがあるのかが気になるところですが、執筆時点(日本時間10月6日20時50分ごろ)では「2.2」にあたる投稿は確認できていません。

Auto-reviewとは——「いちいち上司に確認」をベテランの先輩が肩代わり

Codexは、指示を出すとパソコン上でファイルを作ったりプログラムを動かしたりして、作業を自分で進めてくれる「デジタル部下」です。安全のため、普段は決められた「作業部屋」(専門用語ではサンドボックス)の中だけで動きます。部屋の外に出る操作、たとえばインターネットへの接続や、指定されていないフォルダの書き換えをするときは、そのたびに人間へ「やってもいいですか?」と確認を求めます。

困るのは、その確認の多さです。新人が何をするにも上司のハンコをもらいに来るような状態で、長い作業を任せるほど、人は席を外せなくなります。面倒になって中身を見ずに「承認」を押したり、確認なしで何でもできる「フルアクセス」に切り替えたりすれば、かえって危険です。ソティオ氏も、毎回の承認は「判断疲れ」を招きやすいと指摘しています。

Auto-reviewは、この確認を別のAI(レビュー役)が代わりに行う仕組みです。部下の申請を、経験豊富な先輩が上司の代わりに見て、問題がなければその場でOK、危なければストップをかける、という分担です。レビュー役の仕事は、危険度の高い操作と、利用者のもともとの依頼に沿わない操作を止めることだけ。公式ドキュメントでは、止める対象の例として、秘密情報やパスワードを信頼できない宛先へ送る、ログイン情報を探し回る、セキュリティ設定を広く弱める、取り返しのつかない削除をする、といった操作を挙げています。

大事なのは、Auto-reviewが「できることを増やす機能」ではない点です。作業部屋の広さや、ネット接続・フォルダの制限はそのままで、変わるのは「誰が確認するか」だけです。却下された場合もCodexは理由を受け取り、より安全なやり方を探すか、人に相談します。OpenAIの研究チームが4月に公開した解説によると、当時の社内データでは、Auto-reviewを使うと人の承認待ちで作業が止まる回数が、手動で承認する場合の約200分の1になったといいます。

Auto-reviewの使い方と注意点

有効にする手順は、ソティオ氏の案内どおり「設定」→「一般(General)」→「権限(Permissions)」→「Auto-review」です。公式ドキュメントには、ChatGPTデスクトップアプリの権限の切り替えで「Approve for me(代わりに承認)」というモードとして登場する記述もあります。コマンド画面で使う人は、設定ファイルで切り替えられます。会社で導入している場合は、管理者が組織向けの管理設定でAuto-reviewの判断基準を指定したり、使い方を統一したりすることもできます。

注意したいのは、OpenAI自身が「確実な安全を保証するものではない」と明記していることです。レビュー役が見るのは「作業部屋の外に出ようとする操作」だけで、巧妙に仕組まれた文章などにだまされて誤って許可してしまう可能性もゼロではありません。また、フルアクセスなど確認そのものを省く設定では、レビューの出番がありません。社外秘のデータや、お客さまに影響する本番の環境を扱う作業は、これまでどおり人が最終確認する。そのうえで、日々の細かな承認はAuto-reviewに任せる、という使い分けが現実的です。

ここまでの成績と、ビジネス利用者にとっての意味

28日間の宣言から2日間で、成果は2つとも「改善」で、フルリセットはまだ一度もありません。しかも1日目は誰もが体感できる「速さ」、2日目は長い作業を安心して任せられる「見張り役」と、方向性の違う改善が並びました。宣言の前日にソティオ氏が掲げた「シンプル化」「より多く使えるための効率化」という方針とも、きちんと結びついています。

実務では、次の3点を意識するとよいでしょう。まず、Codexを「フルアクセス」で使っている人は、Auto-reviewへの切り替えを検討すること。無料になり、利用枠も減らないので、試すハードルはほとんどありません。次に、速さの改善は自分の仕事で確かめること。いつもの資料づくりや集計など、決まった作業でかかる時間を比べてみると、効果が実感しやすくなります。最後に、毎日の更新を追う担当を決めておくこと。改善は毎日のように届くので、ソティオ氏のXとOpenAIの公式の変更履歴を1日1回確認し、社内の使い方メモに反映していくと、新しい機能を取りこぼさずに済みます。

まとめ

Codexの「28日間、毎日改善かフルリセット」宣言は、最初の2日間をどちらも「改善」で乗り切りました。1日目は、契約プラン経由で使うGPT-6 AstraとGPT-6.1 Solの標準の速さが約50%向上し、設定変更なしで提携ツールにも広がりました。2日目は、AIの操作を別のAIが見張るAuto-reviewが、ChatGPTアカウントでサインインして使うすべての人を対象に無料となり、利用枠も消費しなくなりました。速さと安心という、仕事でAIを使ううえで欠かせない2つの土台が、それぞれ一歩前進した形です。残り26日で何が出てくるのか、当サイトでも引き続き追いかけていきます。

参考リンク

この記事を書いた人
この記事を書いた人

毎日20時間以上AIの実践・研究に没頭するITエンジニア。20年以上にわたり、オンラインゲームや生活関連など幅広いジャンルのオウンドメディアで執筆・編集長を歴任。現在は上場企業グループの代表取締役を務め、複数の事業者団体で理事を兼務する経営者でもある。テクノロジーの最前線に身を置きつつ、地域の商店街や神社の運営にも深く携わるなど、地域活性化にも尽力。圧倒的な現場経験とITの専門知識、経営者の視点から、信頼性の高い有益な情報を発信している。
Olive株式会社 代表取締役

tanakaをフォローする
コラム
シェアする
tanakaをフォローする

コメント

タイトルとURLをコピーしました