Anthropicは2026年10月1日(米国時間)、AIに開発作業を任せるツール「Claude Code」に、新しい仕組み「mod(モッド)」を追加しました。modは、Claude Codeの動き方や画面の見た目を、利用者が自分の仕事のやり方に合わせて作り替えられる「後付けパーツ」です。ゲーム好きの方なら、有志が作る「MOD(改造データ)」を思い浮かべるとイメージしやすいでしょう。しかも、modはプログラムを書かなくても、Claude自身に「こんなmodを作って」と頼んで用意してもらえます。この記事では、modで何ができるのか、会社で使うときに何に気をつければよいのかを、専門用語をなるべく使わずに整理します。
公式Xで公開された紹介動画
Anthropicの開発者向け公式アカウント「Claude Devs(@ClaudeDevs)」は、発表にあわせて約1分の紹介動画を公開しました。「動きを変える」「画面をカスタマイズする」「自分の機能に差し替える」という3つの特徴を、実際の画面で確認できます。文章だけではつかみにくい雰囲気がわかるので、先に見ておくと本文が理解しやすくなります。
Claude Codeの「mod」とは何か
Claude Codeは、パソコンの中でファイルを読んだり、コマンドを実行したりしながら、開発作業を進めてくれる「デジタル部下」のようなツールです。これまでも、設定や許可ルール、決まった手順をまとめた「スキル」などで、ある程度は自分好みに調整できました。
modは、その一歩先を行く仕組みです。公式ブログでは、modを「Claude Codeの動き方を変える小さなTypeScriptの関数」と説明しています。Claude Codeが何かをするたびに、「道具を使う」「許可を求める」「画面の一部を描く」といった合図が出ます。modはその合図に割り込み、事前に確認したり、内容を書き換えたり、別の動きに置き換えたりできます。
たとえるなら、社用車に後付けする「ドライブレコーダー」や「バック時の警告ブザー」のようなものです。車そのものは変えずに、自分たちの使い方に合わせた機能を足したり外したりできます。modは「プラグイン」という配布形式の中に入れて届けられるため、ほかのプラグインと同じ方法でインストールしたり、仲間と共有したりできます。利用にはClaude Codeのバージョン2.1.287以降が必要で、初期設定で有効になっています。
modでできること——動き・画面・機能を「後付け」する
公式ブログでは、modでできることとして次のような例が挙げられています。
- AIに届く前に、指示文(プロンプト)を書き換える
- AIが道具を使おうとしたときに、止める・書き換える・やり直させる
- 「この操作をしてよいか」という確認に、自動で許可や拒否を返す
- パスワードなどの秘密情報を、AIが読む前に伏せ字にする
- 画面にボタンや入力欄、会話の横に並ぶ専用の表示欄を追加する
これまでも「フック」と呼ばれる仕組みで、決まったタイミングに処理を差し込むことはできました。ただし公式ブログによると、フックでは合図そのものを書き換えたり、新しい画面を描いたり、標準機能を置き換えたりはできませんでした。modはそれができる点が大きな違いです。
もうひとつの注目点は、「Claude CodeでClaude Codeを改造できる」ことです。作りたいmodを言葉で説明すると、Claudeがコードを書き、インストールし、作業中の画面にその場で反映してくれます。料理にたとえれば、レシピを書けなくても「辛さ控えめで、野菜多めに」と頼めば、シェフがその場で味を調整してくれるようなものです。modはClaude Codeのコマンドライン版とデスクトップアプリで使えます。
公式が紹介した3つの見本mod
公式の入門ガイドでは、modの使いどころがわかる見本として、次の3つが紹介されています。
ひとつ目は「Token Weather」です。AIが一度に覚えておける作業メモの量(コンテキスト)がどれくらい埋まったかを、入力欄の上に天気予報のように表示します。使用量に応じて「快晴」「くもり」「にわか雨」「嵐」と変わり、9割を超えると「そろそろ整理を」と知らせます。ガソリン残量メーターのように、AIの「余力」がひと目でわかる仕組みです。
ふたつ目は「Blast Radius」です。ファイルを一括で消すような危ない命令をAIが実行しようとしたとき、いったん止めて「この命令で何が変わるか」を一覧にし、「実行する」「やめる」のボタンを出します。重要書類をシュレッダーにかける前に、上司が中身を確認する場面に近いイメージです。ただし公式ガイドは、これは命令の文面を見て判断する安全網であり、厳密な制限には許可ルールを使うよう注意しています。
みっつ目は「Replay Theater」です。直前のやりとりでAIが行ったファイルの修正を記録し、あとから1件ずつ順番に再生して確認できます。部下の作業を、議事録をめくるように振り返れる機能といえます。
Claude Codeの標準機能もmodになった
今回の発表で興味深いのは、Anthropic自身がmodを使ってClaude Codeの機能を作り始めていることです。公式ドキュメントによると、変更内容を並べて表示する「/diff」の画面や、AGENTS.mdというファイルをプロジェクトの指示として読み込む機能などが、すでに標準搭載のmodとして提供されています。これらはプラグインの管理画面からオフにでき、/diffは自分で作ったmodに置き換えることもできます。
公式ブログは、今後さらに多くの標準機能をmodに移していく方針も示しています。最終的には、Claude Codeを小さな「本体」まで絞り込み、必要な機能だけを足して使えるようにすることを目指しているそうです。スマホを買ったら、使わないアプリを外し、必要なアプリだけをホーム画面に並べるような使い方に近づくと考えるとわかりやすいでしょう。
同じタイミングで、標準のmod「You should know」も追加されました。これは、Claudeが長めの作業をしている間に別のAIが横で見守り、見落としやすい大事な点があれば入力欄の上にメモで知らせる仕組みです。新人の作業を、隣の先輩がそっと見ていて「ここ、気をつけて」と声をかけてくれるようなイメージです。初期状態ではオフで、利用者が有効にする必要があります(使える環境には条件があります)。
便利さの裏側——modは「合鍵」を渡すのと同じ
modは強力なぶん、注意点もはっきりしています。公式ドキュメントによると、modはClaude Codeと同じ権限でパソコン上で動き、隔離された安全な箱(サンドボックス)の中では動きません。インストールしたmodは、ファイルの読み書き、プログラムの起動、インターネットへの通信ができ、送った指示文やAIの操作もすべて見ることができます。設定ファイルなどに保存したAPIキーのような秘密情報を読める点にも注意が必要です。
つまり、modを入れるのは、事務所の合鍵を渡すのと同じです。Anthropicも「信頼できる提供元のmodだけをインストールしてほしい」と明記しています。インストール前に、そのmodがどんな操作をするかを一覧で確認できるチェック用のコマンドも用意されています。
会社で使う場合の管理機能もあります。TeamプランやEnterpriseプランでは、管理者がどの配布元(マーケットプレイス)からのプラグインを許可するかを決められます。また、TeamプランやEnterpriseプラン、組織が設定を一括管理しているパソコンでは「sec-default(セキュリティ・デフォルト)」という標準のmodが最初に読み込まれ、利用者が自分で入れたmodが、組織の「禁止ルール」を勝手に上書きするような危ない動きを止めます。公式ブログは、本番環境の設定を触る前に確認を求めるmodや、ほかのmodの動きをすべて記録する監査用のmodといった、チーム向けの活用例も紹介しています。
ビジネスパーソンはどう向き合えばよいか
modは主に開発者向けの機能ですが、IT担当者ではない方にとっても無関係ではありません。ポイントは、「AIの道具を、会社の仕事のやり方に合わせて仕立て直せるようになった」ということです。たとえば、社内の決まりごとを毎回の指示に自動で添える、危ない操作の前には必ず確認を挟む、といった「社内ルールの後付け」が現実的になります。
一方で、便利そうなmodを見つけるたびに個人で入れていくと、どのパソコンで何が動いているのか把握できなくなります。導入するなら、まずは公式が提供するものや社内で確認したものに限り、情報システム担当者と「入れてよいmodの一覧」を決めておくのが安全です。合鍵を誰に渡したかを管理台帳に残すのと同じ考え方です。
Claude Codeの手順書にあたる「スキル」についてはClaude Skills構築ガイド、作った成果物をチームで共有する機能についてはClaude Codeの新機能Artifactsで変わるチーム共有でも紹介しています。スキルが「部下に渡す業務マニュアル」だとすれば、modは「部下が使う仕事机そのものを作り替える工具箱」といえます。あわせて読むと、Claude Codeの使い分けがつかみやすくなります。
まとめ
Claude Codeのmodは、AIの動き方や画面を利用者が自分で作り替えられる仕組みです。指示の書き換え、危ない操作の一時停止、秘密情報の伏せ字化、専用の表示欄の追加などができ、Claude自身にmodを作ってもらうこともできます。Anthropicは/diffなどの標準機能もmodとして作り直し、必要な機能だけを選んで使える方向へ進めています。ただし、modはClaude Codeと同じ権限で動くため、入れることは合鍵を渡すことと同じです。信頼できる提供元に限り、組織のルールを決めたうえで、小さく試すことから始めるのがおすすめです。


コメント