Orca(オルカ)とは?——Claude CodeもCodexもまとめて並べて動かせる無料のAIエージェント作業場、料金・サブスクの扱い・安全面

コラム

「Claude Codeも使いたいし、Codexも試したい。でも画面を行ったり来たりするのが面倒」――そんな悩みに応えるアプリが「Orca(オルカ)」です。Orcaは、AIに作業を任せる“コーディングエージェント”を何体も同時に並べて動かせる、無料のデスクトップアプリです。Claude CodeやCodexだけでなく、GrokやGemini、Cursorなど30種類近いエージェントに対応し、契約中のサブスクリプションをそのまま使えるのが売りです。この記事では、Orcaの中身、料金、サブスクの扱い、そして使う前に知っておきたい安全面を、中小企業の目線で整理します。

公式の紹介動画

開発元Stably AIの公式YouTubeチャンネルが2026年4月9日(米国時間)に公開した、Product Huntでのローンチに合わせた動画です。動画の説明文では、Orcaは無料・オープンソースで、Mac・Windows・Linuxで動き、分離された作業場所でエージェントを並行して動かせる、と紹介されています。

Orcaとは?

Orcaは、公式サイトで「エージェント開発環境」と名乗っているアプリです。ひと言でいえば、AIエージェントを何人も雇ったときの“共同オフィス”のようなものです。エージェント一人ひとりに専用の机(作業用のコピー)と電話(ターミナル)とブラウザを用意し、全員の進み具合をひとつの画面で見渡せます。

たとえば「ログイン画面の不具合を直す」という同じお題を、Claude CodeとCodexとCursorに同時に出し、出来上がった変更を見比べて一番よいものを採用する、といった使い方が公式ドキュメントの最初の手順として紹介されています。

項目内容
正式名Orca(GitHub上のリポジトリ名は stablyai/orca)
開発元Stably AI(米サンフランシスコ。Y Combinatorの2022年冬バッチ出身。共同創業者はJinjing Liang氏とNeil Parker氏)
公開2026年3月にGitHubで公開。確認できた最初のリリースは3月21日(米国時間)。4月にはProduct Huntでのローンチに合わせた動画を公開
最新版v1.4.241(2026年10月26日12時48分・日本時間)。ほぼ毎日のように更新
ライセンスMIT(無料で使え、商用利用・改変もできるオープンソース)
対応OSmacOS(Apple Silicon・Intel)、Windows、Linux。スマホ用の連携アプリ(iOS・Android、ベータ版)もあり
人気GitHubのスター数は10万超(10月26日時点)

どうやって複数のAIを同時に動かすのか

Orcaの仕組みの中心は「ワークツリー」というGitの機能です。ワークツリーは、同じプロジェクトの“作業用コピー”を何枚も作れる仕組みで、エージェントごとに別のコピーを渡すので、お互いの作業がぶつかりません。書類の原本を守ったまま、担当者ごとにコピーを配って下書きしてもらうイメージです。

使い始めの流れは、プロジェクトを追加し、ワークツリーを作り、エージェントを選んで動かし、画面を分割して並べ、変更点を確認してから取り込む、という順番です。

  • 画面分割:複数のエージェントのターミナルを並べて同時に見られる
  • 変更の確認:AIが書き換えた箇所を色分けで表示し、気になる行にコメントを付けてAIに差し戻せる
  • Git操作:コミットやプルリクエスト作成をアプリ内で完結。GitHub・GitLab・Linear・Jiraとも連携
  • 内蔵ブラウザ:作った画面をその場で確認し、指さしで修正を頼める「デザインモード」付き
  • 通知とスマホ連携:エージェントの作業が終わると通知。スマホアプリから返事をしたり、状況を確認したりできる
  • 利用量の表示:ClaudeやCodexの利用枠がどれだけ残っているかを画面下で確認できる
  • 遠隔実行:SSHでつないだ別のパソコンやサーバー上でエージェントを動かすことも可能

なお、Orca自体はAIモデルを持っていません。公式ドキュメントでも「Orcaはモデルではない」と明記されており、実際に考えて作業するのは、Claude CodeやCodexといった各社のエージェントです。Orcaはそれらを束ねる“司令室”の役割です。

対応しているエージェント

公式サイトでは27種類の対応エージェントが案内され、公式ドキュメントにはさらに多くの名前が並んでいます。主なものは次のとおりです。

  • Claude Code(Anthropic)
  • Codex(OpenAI)
  • Grok(xAI)
  • Gemini(Google)
  • Cursor CLI
  • GitHub Copilot CLI
  • OpenCode、Amp、Hermes、Goose、Cline、Kiro、Qwen Code、Kimi、Aider など

一覧にないものでも、ターミナルで動くエージェントなら基本的に起動できる、と公式は説明しています。

日本語で使える?

使えます。設定画面の「Language」で日本語を選べば、画面表示が日本語になります。GitHubには日本語版の説明書(README)も用意されています。macOSの日本語キーボードで「¥」をバックスラッシュとして入力する設定や、日本語に対応した音声入力モデルの選択肢もあります。

ただし、公式ドキュメントやサポートの中心は英語です。また、公式ドキュメントは「プロの開発者向けで、ノーコードツールではない」とはっきり書いています。Gitやターミナルにまったく触れたことがない人が、いきなり使いこなすのは難しい道具です。

料金とほかのツールとの比較

Orca本体は無料です。有料プランは公式サイトで確認できませんでした。企業向けページはありますが、料金は掲載されておらず、問い合わせ制です。お金がかかるのは、中で動かすClaude CodeやCodexなどの利用料で、これは各社に直接支払います。

ツール料金(公式ページの表示・税抜)特徴
Orca無料(MITライセンス)。企業向けは問い合わせMac・Windows・Linux対応。30種類近いエージェントを並べて使える。AIの利用料は別
ConductorFree:月0ドル、Pro:月50ドル、Teams:1人月60ドル、Enterprise:要問い合わせ同じく複数エージェントを並行で動かすアプリ。Mac専用。無料版は手持ちのサブスクやAPIキーを利用
CursorFree:月0ドル、Plus:月8ドル、Premium:月30ドル、Super:月100ドル、Ultra:月200ドル、Teams:1人月30ドルからAI搭載の開発エディタ。Plusで使えるのはGrokモデルのみ。他社モデルは別途API定価で課金
Claude Code(Claudeの公式アプリ・ターミナル版)Pro:月20ドル(年払いなら月17ドル相当)、Max:月100ドルからAnthropic公式。Pro以上に含まれ、チャットと利用枠を共有
Codex(ChatGPTの公式アプリ・ターミナル版)Plus:月20ドル、Pro:月100ドル・200ドル・500ドルの3種類OpenAI公式。無料プランでも限定的に利用可。Plus以上で本格的に使える

つまり、すでにClaude ProやChatGPT Plusを契約している人なら、Orcaを足しても追加の費用はかかりません。逆に「Orcaを入れれば無料でAIが使い放題になる」わけではない点に注意してください。複数のエージェントを同時に動かすぶん、各社の利用枠を早く使い切りやすくなります。

手持ちのサブスクは使える?APIキーは必要?

Orcaは「手持ちのClaude、Codex、OpenCodeのサブスクリプションを持ち込む」設計です。Claude Codeなら、まず公式のClaude Codeを入れて一度ログインしておけば、Orcaはその設定を読み込んで起動します。Codexも同様で、公式のCodexにChatGPTアカウントでログインしておけば、Orcaから使えます。APIキーは必須ではありません。

各社のルールも確認しました。Anthropicの規約ページでは、Claudeのサブスクリプションでのログインは「普通にClaude Codeを使うため」のものとし、第三者の開発者がClaudeのログインを代行したり、サブスクの認証情報を経由させたりすることを禁じています。一方で、利用者本人が自分のサブスクで「改変されていない公式のClaude Code」にログインすることは妨げない、とも書いています。Orcaは公式のClaude Codeをそのまま起動する仕組みなので、この範囲に収まるように見えます。

OpenAIの公式ドキュメントでは、CodexはChatGPTアカウントでのログイン(サブスクの範囲で利用)と、APIキーでのログイン(API料金で従量課金)の両方に対応しています。ログイン情報はパソコン内に保存されるため、パスワードと同じように扱うよう注意を促しています。

気をつけたいのは、Orcaの「複数アカウントの切り替え」機能です。公式ドキュメントには「利用制限を延ばすために複数アカウントを使う人が多い」という説明があります。しかし、AnthropicもOpenAIも、こうした使い方を認めるかどうかを明言していません(未確認)。Anthropicは、ProやMaxの利用枠は「一般的な個人の使い方」を前提にしているとも書いています。会社で使うなら、1人1契約で正しく使うのが無難です。

安全面とプライバシー

Orcaはアカウント登録なしで使え、開発元は「プロンプトやコードを中継しない。各社へ直接送られる」と説明しています。匿名の利用統計は米国のPostHogというサービスに送られますが、プロンプト、コード、ファイルの場所、リポジトリ名などは送らないと明記されています。統計の送信は設定の「Privacy」から止められます。

一番注意したいのは、初期設定の「おまかせ度」です。Orcaは標準で、Claude Codeなら確認なしで作業させるオプション、Codexなら確認と隔離の両方を外すオプションを付けてエージェントを起動します。毎回「このコマンドを実行してよいですか?」と聞かれずに済む反面、AIが思わぬファイルを消したり、ネットに接続したりしても止められません。

公式ドキュメント自身も「ワークツリーは作業用のコピーであって、安全のための隔離環境ではない。エージェントはファイルやネットワークにアクセスできる」と注意しています。使い始めたら、まず「設定」→「Agents」→「Agent Permissions」を「Manual」に切り替え、各エージェント本来の確認を有効にしておくことをおすすめします。

  • スマホ連携で使う「Orca Relay」の通信がどのように保護されているかは、今回確認できた資料では詳しく分かりませんでした(未確認)。社内のネットワーク内だけで接続する方法も用意されています
  • 企業向けページでは「SOC 2準備中」の表記で、認証の取得済みとは書かれていません
  • 更新がほぼ毎日あるため、社内で使うなら自動更新の扱いを決めておくと安心です

開発AIを安全に使う考え方は、Claude CodeやCursorのリスクを回避する実践ガイドの記事でも紹介しています。

公式Xで公開された紹介動画

Orcaの公式Xアカウントが2026年10月20日(米国時間)に投稿した動画付きの告知です。投稿文では、複数のAIアカウントを登録してワンクリックで切り替えられること、ログイン情報は自分のパソコンに残り、Orcaは操作するだけであることが説明されています。

中小企業にとっての意味

Orcaが示しているのは、「AIを1つ選ぶ」時代から「複数のAIを同時に働かせて、人が選ぶ」時代への流れです。同じ仕事を2〜3のAIに同時に頼み、一番出来のよいものを採用する。人間でいえば相見積もりのようなやり方が、無料の道具で手軽にできるようになりました。

社内にエンジニアがいる会社や、外部の開発会社と一緒に自社システムを作っている会社なら、試す価値は十分あります。すでにClaude ProやChatGPT Plusを契約していれば追加費用はゼロで、どのAIが自社の作業に向いているかを比べる“試験場”としても使えます。

一方で、プログラミングを担当する人がいない会社には、まだ早い道具です。導入するなら、次の3点を最初に決めておきましょう。

  • 権限設定を「Manual」にして、AIが勝手にコマンドを実行しないようにする
  • 顧客情報などの大事なデータが入ったフォルダでは使わない
  • AIの契約は1人1アカウントを基本にし、複数アカウントで利用枠を増やす使い方はしない

AIエージェントにパソコン全体を任せる別のアプローチは、Herald OSの記事で紹介しています。Codexの最新動向はCodex「28日間の改善」21日目の記事、ログイン情報を安全に扱う方法は1PasswordとCodexの連携の記事もあわせてご覧ください。

まとめ

Orcaは、Stably AIが開発する無料・オープンソースのアプリで、Claude CodeやCodexなど30種類近いAIエージェントを、作業がぶつからないように並べて動かせます。日本語表示に対応し、Mac・Windows・Linuxで使えます。契約中のサブスクをそのまま使えるため、追加費用はかかりません。ただし初期設定ではAIが確認なしで動くため、権限を「Manual」に切り替えるのが安全です。複数アカウントの切り替えが各社の規約上どこまで認められるかは未確認なので、1人1契約で正しく使うことをおすすめします。

参考リンク

この記事を書いた人
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毎日20時間以上AIの実践・研究に没頭するITエンジニア。20年以上にわたり、オンラインゲームや生活関連など幅広いジャンルのオウンドメディアで執筆・編集長を歴任。現在は上場企業グループの代表取締役を務め、複数の事業者団体で理事を兼務する経営者でもある。テクノロジーの最前線に身を置きつつ、地域の商店街や神社の運営にも深く携わるなど、地域活性化にも尽力。圧倒的な現場経験とITの専門知識、経営者の視点から、信頼性の高い有益な情報を発信している。
Olive株式会社 代表取締役

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