DeepSeekの新Flash「V4.1-Flash-1017」公開——料金据え置きで性能向上、主要AIとのAPI料金比較と使う前の注意点

コラム

中国のAI企業DeepSeek(ディープシーク)が、高速・低価格を売りにする「Flash」シリーズの新版「DeepSeek-V4.1-Flash-1017」を公開しました。公式Xでの発表は日本時間2026年10月17日午後5時35分です。

名前の「1017」は10月17日版という意味で、9月に登場したV4.1-Flashの改良版にあたります。DeepSeekは「性能が上がり、作業が速く終わり、出力も短くなった」と説明しており、API料金は据え置きです。

この記事では、これまでのFlashや上位モデル「V4 Pro」との違い、会社が公表した性能、料金と主要AIとの比較、日本から試す方法、そして業務で使う前に知っておきたい注意点を、専門知識がなくても分かるように整理します。

公式Xで公開された紹介動画

DeepSeekの公式Xは、発表スレッドの中で「ゼロから完成したプロジェクトを作る」例として、短い動画(GIF形式)4本を公開しています。ゲーム風の画面や3D表現を使ったWebページなどの作例です。

DeepSeek-V4.1-Flash-1017とは

DeepSeekのAIは、上位の「Pro」と、速さと安さを重視した「Flash」の2系統があります。今回のV4.1-Flash-1017は、Flash系の最新版です。DeepSeekのWebサイトやスマホアプリのAIも、この新版に切り替わりました。

土台になっているV4.1-Flash(9月10日発表)は、DeepSeekが新しく作り直した設計の中で最も小さいモデルです。発表時の説明では、全体で5520億個のパラメータ(AIの知識の「脳の細胞」のようなもの)を持ちながら、実際に働くのは入力の読み取りで80億個、文章の書き出しで160億個だけ。大きな専門家チームの中から、その場で必要な人だけを呼び出す仕組みだとイメージすると分かりやすいでしょう。

文章だけでなく画像も読み取れ、一度に扱える情報量(コンテキスト)は100万トークン、1回で書き出せる量は最大38万4000トークンです。分厚い資料の束を一度に広げられる「大きな仕事机」を持ったAIといえます。

今回の1017版で特に強調されているのが、ゼロから一つのプロジェクトを作り上げる力です。DeepSeekは「自己フィードバックによる強化学習」という方法で、AI自身の評価を手がかりに学習させ、ゲーム制作から3Dモデリングまで、最初から最後まで仕上げる力を伸ばしたと説明しています。

前のFlashやV4 Proから何が変わったのか

DeepSeekのFlashはここ半年で短い間隔で入れ替わっています。流れを表にまとめました。

時期モデル主な特徴
2026年4月24日V4-Flash(プレビュー)V4シリーズとして100万トークン対応で登場
7月31日V4-Flash 正式版エージェント(自分で作業を進めるAI)性能を強化
8月21日V4-Flash-Vision-Exp画像理解に対応した実験版を別モデルとして追加
9月10日V4.1-Flash新しい設計に刷新。画像理解を標準搭載し、API料金を値下げ
10月17日V4.1-Flash-1017小規模アップデート。性能向上と、作業時間・出力の短縮。料金は据え置き

9月のV4.1-Flashでは、AIが会話の途中経過を覚えておく「メモ帳」(KVキャッシュ)を大幅に小さくしたことも特徴です。前の世代と比べ、高速メモリの使用量は4分の1、保存領域は8分の1で済むとされます。同じ資料を何度も読ませる業務ほど、費用を抑えやすくなる工夫です。

上位モデルの「V4 Pro」との関係は少し複雑です。DeepSeekは9月の発表時に「V4.1-FlashはV4-Proを性能・費用・速度で上回る」としてV4 Proの段階的な終了を打ち出しましたが、その後「利用者の要望を受けて9月14日以降もV4 ProのAPI提供を続ける」と案内しました。現在の料金ページにもV4 Pro(DeepSeek-V4-Pro-0813)が並んでおり、Flashより割高で、画像の読み取りには対応していません。

前回のFlash正式版については、当サイトの「DeepSeek V4 Flash正式版が登場!Proプレビュー超えとCodex対応を解説」でも紹介しています。

会社が公表した性能

DeepSeekがHugging Faceのモデル説明ページで公表した比較から、主なものを抜き出しました。いずれもDeepSeek自身による測定で、第三者による検証はまだこれからです。

評価テスト分野V4.1-Flash-1017前版 V4.1-FlashClaude Opus 5GPT-5.6 Sol
HLE(道具なし)幅広い分野の難問42.636.856.344.5
Terminal-Bench 4.0コマンド操作による作業42.331.251.839.9
DeepSWE v1.1ソフトウェア開発77.074.274.073.0
NL2Repo-Bench指示からのプログラム一式作成68.265.475.356.8
Automation-Bench v1.0.6業務の自動化60.554.850.345.8
Agents’ Last Examエージェント作業35.431.828.626.7
Chartography(道具あり)図表の読み取り83.078.984.079.9
BabyVision(道具あり)画像の理解92.589.694.188.9
DeepSeek公表値。Terminal-Bench 4.0はClaude Code、DeepSWEはMini-SWE-V2という作業環境で測定

前の版と比べると、すべての項目で数字が伸びています。他社モデルとの比較では、ソフトウェア開発(DeepSWE)や業務自動化、エージェント作業ではClaude Opus 5を上回る一方、難問への回答やコマンド操作、図表・画像の読み取りではOpus 5に届いていません。「小さくて安いのに、得意分野では最上位級に迫る」というのが、DeepSeek自身の主張の要点です。

海外メディアのThe Decoder(二次情報)は、DeepSeekが示したグラフをもとに、ソフトウェア開発の1課題あたりの費用が平均0.20ドル弱だったと伝えています。ただし、これもDeepSeekの社内測定にもとづく数字です。

オープンウェイトで公開、MITライセンス

V4.1-Flash-1017は、AIの中身にあたる「重み」がHugging FaceとModelScopeで公開されている、いわゆるオープンウェイトのモデルです。ライセンスは商用利用もしやすいMITライセンスとされています。

これは料理でいえば、レストランで食べられるだけでなく、レシピも公開されている状態です。DeepSeekのサービスを通さず、自社や国内のクラウド上で動かす選択肢があるのは、後で触れるデータの取り扱いの面で大きな意味があります。ただし、5000億を超えるパラメータを持つ大型モデルのため、一般的なパソコンで動かせる規模ではなく、自前で運用するには高性能なサーバーと専門知識が必要です。

API料金と使える量

APIでは、モデル名に「deepseek-flash」を指定すると最新のV4.1-Flash-1017が使われます。以前の名前(deepseek-v4-flashなど)で呼び出しても、自動的に新モデルへ回され、Flashの料金で請求されます。

DeepSeekの料金の特徴は、混雑する時間帯(ピーク)とそれ以外(オフピーク)で値段が変わることです。オフピークはピークの半額です。

項目(100万トークンあたり)deepseek-flash(V4.1-Flash-1017)deepseek-v4-pro(V4-Pro-0813)
入力(キャッシュ利用時)0.003ドル/ピーク0.006ドル0.022ドル/ピーク0.044ドル
入力(通常)0.15ドル/ピーク0.30ドル0.66ドル/ピーク1.32ドル
出力0.60ドル/ピーク1.20ドル1.98ドル/ピーク3.96ドル
画像の読み取り対応非対応
同時に処理できる数の上限2500500
各セルの左がオフピーク、右がピーク料金(DeepSeek公式「Models & Pricing」より)

ピークの時間帯は、日本時間に直すと平日の午前10時〜午後1時と、午後3時〜7時です。それ以外の時間と土日、中国の祝日は終日オフピーク料金になります。日本の業務時間とかなり重なるため、急がない大量処理は夕方以降や週末に回すと費用を半分にできます。

あわせてDeepSeekは、自社開発の検索エンジンを使う「Search API」「Fetch API」を全開発者に開放しました。料金はそれぞれ1000回あたり0.75ドルです。Claude CodeやCodexなどのツール経由で自動的に使われる検索は現在無料ですが、日本時間2026年11月1日午前1時から課金が始まる予定です。

主要AIとのAPI料金比較

主要各社の公式料金ページ(10月18日時点)で、100万トークンあたりの標準料金を比べました。各社とも条件によって割引や割増があるため、代表的な料金を載せています。

モデル提供元入力出力備考
DeepSeek-V4.1-Flash-1017DeepSeek0.15〜0.30ドル0.60〜1.20ドル時間帯で変動(安い方がオフピーク)。キャッシュ利用時の入力は0.003〜0.006ドル
DeepSeek V4 ProDeepSeek0.66〜1.32ドル1.98〜3.96ドル時間帯で変動。画像の読み取りは非対応
Gemini 3.8 FlashGoogle0.75ドル3.75ドル2026年12月31日までの価格。2027年1月1日から1.50ドル/7.50ドル
Gemini 4 ArgonGoogle2.00ドル10.00ドル11月30日までの導入価格。12月1日から4.00ドル/20.00ドル
GPT-6 LunaOpenAI0.10ドル0.50ドル27万2000トークン以下の場合。キャッシュ済み入力0.01ドル
GPT-6.1 SolOpenAI2.00ドル10.00ドル27万2000トークン以下の場合。キャッシュ済み入力0.10ドル
Claude Haiku 5.5Anthropic0.10ドル0.50ドル10万トークン以下の場合。超えると0.50ドル/2.50ドル
Claude Sonnet 5.5Anthropic2.00ドル10.00ドルキャッシュ読み取り0.10ドル
Claude Opus 5.5Anthropic4.00ドル20.00ドルキャッシュ読み取り0.20ドル
Grok 4.7xAI2.00ドル6.00ドル20万トークン未満の場合。20万以上は4.00ドル/12.00ドル

表で見ると、DeepSeek Flashは上位モデル(Gemini 4 Argon、GPT-6.1 Sol、Claude Sonnet・Opus、Grok 4.7)と比べて入力・出力とも数分の1から十数分の1の安さです。一方、単価だけならOpenAIのGPT-6 LunaやAnthropicのClaude Haiku 5.5のほうが安く、「どこよりも安い」わけではありません。

DeepSeek Flashの強みは、小型モデル並みの値段で、プログラミングや業務自動化では上位モデルに迫る性能を公表している点と、同じ資料を繰り返し読ませるときのキャッシュ料金が極めて安い点にあります。また、同じ文章でもモデルによって数えるトークン数が異なるため、実際の費用は自社の業務で試して比べるのが確実です。各社の料金の全体像は、当サイトの「LLM API料金比較——OpenAI・Claude・Gemini・Grok・DeepSeek・Qwenの公式単価を整理」も参考にしてください。

日本からの試し方

試し方は大きく3つあります。

  • Webサイト・スマホアプリで使う:DeepSeekのチャット画面とアプリのAIが新版に切り替わっています。まずは公開してもよい内容で、文章の要約や資料の整理を試してみるのが手軽です。
  • APIで使う:DeepSeekの開発者向けサイトでAPIキーを取得し、モデル名に「deepseek-flash」を指定します。OpenAIやAnthropicと同じ形式で呼び出せるため、既存のシステムの接続先を切り替えるだけで試せる場合があります。
  • AIツールの裏側として使う:Claude Code、OpenCode、Codexなどのツールから、DeepSeekを頭脳として使う方法も公式に案内されています。DeepSeekは、自社のエージェント用ツール「DeepSeek Harness」やTencentのCodeBuddy、WorkBuddyに向けて特に調整したとしています。

なお、公式発表には日本語の性能についての記載はありません。日本語の資料やメールで使う場合は、自社の実際の文書で品質を確かめてから判断するのが安全です。

ビジネスでの活用アイデア

料金の安さと長い資料を扱える点を活かすと、次のような使い方が考えられます。

  • 社内向けの小さなツール作り:ゼロからのプロジェクト作成が強化されたため、在庫の一覧表示や簡単な受付フォームなど、社内用のWebページの試作を任せる「デジタル部下」として。
  • 大量の定型作業の自動化:問い合わせメールの分類や、議事録の要点整理など、件数が多い作業をオフピークの時間帯にまとめて処理。
  • 同じ資料を何度も参照する業務:社内規程やマニュアルを毎回読ませる質問対応は、キャッシュ料金の安さが効きやすい使い方です。
  • 図表や画像を含む資料の読み取り:グラフ入りの報告書の要点をまとめるなど、画像を含む資料の下読みに。

使う前に知っておきたい注意点

最も重要なのはデータの扱いです。DeepSeekのプライバシーポリシーには、サービスを提供するために個人データを中華人民共和国で収集・処理・保存すると書かれています。日本の個人情報保護委員会も2025年2月、DeepSeekの利用で取得されたデータは中国のサーバーに保存され、中国の法令が適用されるとして注意を呼びかけています。

このため、DeepSeekのWebサイトやアプリ、APIには、顧客の個人情報や社外秘の資料を入れないのが基本です。業務で使うなら、どの作業に使ってよいかを社内で決めてから導入しましょう。機密性の高い用途では、公開された重みを国内のクラウドや自社環境で動かす方法を検討する価値があります。

このほか、次の点にも気をつけてください。

  • 性能の数字はDeepSeekが自分で測ったものです。第三者の評価が出そろうまでは参考値として扱いましょう。
  • ピーク・オフピークの区分は中国の祝日を基準にしています。日本の祝日でも平日扱いになる日があります。
  • DeepSeekのモデルは短い間隔で更新されています。「deepseek-flash」は常に最新版を指すため、ある日から回答の傾向が変わることがあります。
  • 料金は変更されることがあるとDeepSeek自身が明記しています。導入前に公式ページで最新の料金を確認してください。

まとめ

DeepSeek-V4.1-Flash-1017は、料金を据え置いたまま性能を引き上げ、作業時間と出力の長さも短くした、Flashシリーズの改良版です。会社の公表値では、ソフトウェア開発や業務自動化の分野で他社の最上位モデルに迫り、オフピークなら入力100万トークン0.15ドルという価格で使えます。

一方で、単価だけならさらに安い他社の小型モデルもあり、データが中国で保存されるという点は業務利用で避けて通れません。まずは公開してよい情報で試し、得意分野と費用を自社の業務で確かめたうえで、機密情報を扱わない作業や、自社環境での運用から検討するのが現実的な付き合い方といえるでしょう。

参考リンク

この記事を書いた人
この記事を書いた人

毎日20時間以上AIの実践・研究に没頭するITエンジニア。20年以上にわたり、オンラインゲームや生活関連など幅広いジャンルのオウンドメディアで執筆・編集長を歴任。現在は上場企業グループの代表取締役を務め、複数の事業者団体で理事を兼務する経営者でもある。テクノロジーの最前線に身を置きつつ、地域の商店街や神社の運営にも深く携わるなど、地域活性化にも尽力。圧倒的な現場経験とITの専門知識、経営者の視点から、信頼性の高い有益な情報を発信している。
Olive株式会社 代表取締役

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