建築やリフォーム、店舗づくりの打ち合わせでは、図面だけでは完成後の雰囲気が伝わりにくいことがあります。3Dソフトで作ったラフなパースがあっても、素材感、照明、家具、小物、植物などが入っていないと、お客様は「そこで暮らす感じ」を想像しづらいものです。
今回の週間AI活用事例では、パース作成を例に、画像2-1のようなラフな3Dパースを、画像2-2のような完成イメージへ近づける使い方を紹介します。ポイントは、AIに設計判断を任せるのではなく、提案の伝わりやすさを高める補助役として使うことです。
ラフパースは「形を確認する資料」として使う
パース作成で最初に大切なのは、AIでいきなり美しい完成画像を作ることではありません。まずは、窓の位置、階段の向き、キッチンとの距離、天井の高さ、家具の大きさなど、空間の骨格が合っているかを確認することです。画像2-1のようなラフな3Dパースは、細部の美しさよりも、空間の関係性を共有するための資料として役立ちます。
この段階でAIに頼むなら、「このパースでお客様が迷いそうな点を挙げて」「生活動線として見たときの確認ポイントを出して」「打ち合わせ用に説明すべき箇所を整理して」といった使い方が現実的です。AIは画像の印象を言語化するのが得意なので、設計者や担当者が見落としがちな説明ポイントを洗い出す補助になります。
完成イメージでは素材感と照明を具体的に指示する
画像2-2のような完成イメージに近づけるには、AIへの指示を「おしゃれにして」だけで終わらせないことが重要です。床は明るい木目、階段はナチュラルな木材、壁はやわらかい白、夕方の外光、室内は暖色の照明、キッチンカウンターには小物を少し置く、といったように、素材と光を具体的に伝えます。
建築パースでは、照明の雰囲気だけで印象が大きく変わります。昼の自然光にするのか、夕景にするのか、夜の間接照明にするのかで、同じ空間でも感じ方は違います。AIを使う場合は、同じ構図のまま「朝」「夕方」「夜」の3案を作り、お客様が好む雰囲気を選べるようにすると、打ち合わせが進めやすくなります。
生活感は足しすぎず、提案したい暮らしを見せる
完成イメージを作るとき、家具や小物をたくさん入れすぎると、かえって主役である空間が見えにくくなります。おすすめは、生活感を「少しだけ」足すことです。ダイニングテーブルの器、キッチンカウンターの本や瓶、階段まわりの観葉植物など、暮らしを想像できる要素を絞って配置します。
AIに依頼するときは、「モデルルームのように整っているが、実際に暮らしている温かさが少しある」「家具と小物は控えめ」「建築の形が見えるように散らかさない」と伝えると、提案資料として使いやすい雰囲気になります。実施設計や見積もりの根拠にする画像ではなく、方向性を共有するイメージとして位置づけるのが安全です。
おすすめの指示文
最初に使いやすい指示文は、次のようなものです。画像を添付できるAIであれば、ラフパースを見せたうえで、構図を保ちながら素材感や照明を整える依頼にすると精度が上がります。
- このラフな3Dパースをもとに、構図と空間の形は大きく変えず、木の温かみがある住宅の完成イメージにしてください。
- 床は明るい木目、階段はナチュラルな木材、壁は白系、夕方の外光と室内の暖色照明で、落ち着いた雰囲気にしてください。
- ダイニング、キッチン、階段まわりが伝わるように、家具や小物は控えめに配置してください。生活感は少しだけ加えてください。
- お客様への提案資料として使うため、リアルすぎる装飾よりも、素材感・明るさ・暮らしのイメージが伝わることを優先してください。
- この完成イメージを見たお客様に説明すべきポイントを、素材、照明、動線、収納、暮らし方の5項目で整理してください。
まとめ:パース作成のAI活用は「伝わる資料づくり」に効く
パース作成でAIを使う価値は、設計そのものを置き換えることではなく、提案の意図をわかりやすく伝えることにあります。ラフパースで空間の骨格を確認し、AIで素材感、照明、家具、小物、生活感を整える。この順番で使うと、打ち合わせ前のイメージ共有がぐっと楽になります。
特に中小の工務店、設計事務所、リフォーム会社では、毎回フルCGを作り込むのは負担が大きいものです。まずは既存のラフパースを1枚使い、雰囲気違いの完成イメージを2〜3案作るところから始めると、AIの効果を実感しやすくなります。

