中国が「AI版・国連」設立を提唱——上海「世界AI会議」開幕、米中ガバナンス争いが新局面へ

コラム
AI業界 週間ニュース速報 2025.07.26

2025年7月26日、中国・上海で「2025年世界人工知能会議(WAIC 2025)」が開幕しました。70カ国以上から800社超が参加した史上最大規模のAIイベントで、中国は「世界AI協力機構」の設立を提唱。3日前に米国が発表したAIアクションプランへの対抗とも受け取れるこの動きは、AI技術の覇権争いが「ガバナンス(国際ルール形成)」という新たな戦線へ突入したことを示すものです。


① 世界AI会議2025、上海で開幕——史上最大規模の3日間

世界AI会議2025 WAIC 上海開幕

上海エキスポセンターを主会場に開幕したWAIC 2025には、70カ国以上から1,200名超の有識者が参加。チューリング賞・ノーベル賞受賞者12名、中国内外の学士院会員80名超が顔を揃える、文字通り「AI界の国連総会」とも呼べる規模です。

展示面でも圧倒的なスケールで、40以上の大規模AIモデル、50台のスマート端末、60体のインテリジェントロボット、そして世界・中国初公開となる製品が100点以上展示されました。総出展社数は800社超、来場者は延べ数万人に上ると見られています。

今回のテーマは「AIの時代におけるグローバル連帯(Global Solidarity in the AI Era)」。技術力を競うだけでなく、国際的な協調をどう構築するかが、会議全体の問いとして設定されました。


② 中国が「世界AI協力機構」を提唱——国連主導でAIルールを作れ

中国 世界AI協力機構 設立提唱

最大の注目を集めたのは、李強(リー・チャン)国務院総理による「世界AI協力機構(World AI Cooperation Organization)」の設立提案です。本部を上海に置くことも合わせて表明されました。

この組織が目指すのは、特定の国や企業がAI技術を独占することを防ぎ、国連を主要チャネルとしてAIの国際ルールを民主的に形成すること。技術の急速な進化に対し、各国が等しく恩恵を受けられるよう「包括的なAIガバナンス」を構築する狙いがあります。

同日、上海AIラボとConcordia AIは共同で「フロンティアAIリスク管理フレームワーク v1.0」を公開しました。汎用AI(大規模基盤モデル)から生じる深刻なリスクを体系的に管理するための枠組みで、中国として初の包括的リスクフレームワークとされています。


③ 米中「AIガバナンス」の綱引き——規制とルールの主導権をめぐって

米中AIガバナンス覇権争い

今回の動きを理解する上で重要な背景があります。わずか3日前の7月23日、米国ホワイトハウスは「アメリカのAIアクションプラン」を発表。90以上の連邦施策により米国が国際AI標準の形成を主導すると宣言したばかりです。

中国の「国連中心主義」と米国の「米国主導主義」——両国のアプローチは方向性が正反対です。米国プランが「同盟国を巻き込みながらも米国がリードする」姿勢である一方、中国は「特定国が主導権を持たない国際機関」を通じたルール形成を主張しています。

この構図は、かつての宇宙開発競争や核軍縮交渉に似ています。AI技術そのものの競争に加え、「どの国がAIのルールを書くか」という制度設計の競争が始まったのです。日本を含む各国にとっても、どちらの枠組みに参画するかは無視できない外交・産業上の問いとなっています。


まとめ:「ガバナンス」がAI競争の新たな主戦場に

WAIC 2025の開幕は、AI技術の競争が「モデルの性能」から「ルールの形成」へとステージを移したことを象徴する出来事です。

  • 中国:「世界AI協力機構」設立を提唱、上海を国際AI外交の拠点に
  • 米国:AIアクションプランで90以上の政策を打ち出し、国際標準の主導権を宣言
  • 日本への示唆:どちらの枠組みに参画するかが、産業・外交上の急務に

技術を作る競争だけでなく、「AIをどう使うか・どう規制するか」のルールを誰が決めるかという問いが、今後10年のAI産業の地図を大きく塗り替えていくことになるでしょう。AI共創広場では、こうした最前線の動きを引き続きお届けします。

参考情報:
World AI conference opens in Shanghai with record scale – CGTNChinese premier calls for early formation of global AI governance framework – gov.cn

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