MetaがMuse WonderとMuse Wonder Fullを発表——AIエージェント向け最上位モデルの違い・料金・日本での使い方

コラム

Metaが新しいAIモデル「Muse Wonder(ミューズ・ワンダー)」と、その上位版「Muse Wonder Full(ミューズ・ワンダー・フル)」を発表しました。日本時間では2026年10月13日未明の発表です。

Metaはこの2つを「これまでで最も高性能なモデル」と位置づけ、保険の請求手続きや賃貸契約書の読み解き、アプリづくりといった「仕事や暮らしの実務を任せるAIエージェント」向けに作ったと説明しています。

この記事では、2つのモデルの違い、会社が公表した性能、料金、日本から使えるのか、そしてITに詳しくない方でも押さえておきたい活用のヒントを整理します。

公式Xで公開された紹介動画

AI at Metaの公式Xアカウントは、発表と同時に紹介動画付きのポストを公開しています。

Muse WonderとMuse Wonder Fullとは

Muse Wonderは、Metaの研究組織「Meta Superintelligence Labs」が開発した新しいAIモデルのシリーズです。以前の「Muse Spark」を土台に、Metaの大規模データセンター「Prometheus」で学習したとされています。

文章だけでなく画像・音声・動画も読み込めて、答えは文章で返します。一度に扱える情報量(コンテキスト)は約100万トークンで、長い契約書や資料の束をまとめて渡せる「とても広い仕事机」をイメージすると分かりやすいでしょう。

Metaが特に強調しているのが2つの新機能です。「Active Memory(アクティブ・メモリー)」は、会話をまたいで大事な情報を覚えておき、必要なときに思い出す機能。「Active Focus(アクティブ・フォーカス)」は、作業が難しくなっても目標を見失わず、別のやり方を試したり、誤りから立て直したりしながら最後までやり切る機能です。重要な操作の前には確認を求める設計だとも説明されています。いわば「指示を覚えていて、途中で投げ出さないデジタル部下」を目指したモデルです。

なお、Metaの以前のLlamaシリーズとは違い、Muse Wonderは中身(重み)を公開しないクローズドなモデルです。

WonderとWonder Fullの違い

2つのモデルの一番の違いは「性能」と「使える場所」です。Wonder Fullのほうが高性能ですが、今のところ使える場所が限られています。

項目Muse WonderMuse Wonder Full
位置づけ標準版上位版(より高性能)
使える場所Meta Model API、Muse CodeMuse Codeの有料プランのみ
API提供あり(モデル名 muse-wonder-1.0、プレビュー)なし(発表時点)
消費者向けMuseアプリ今後搭載予定(まず有料会員から)発表時点で明示なし

「Muse Code」は、Metaが提供するプログラミング支援のAIエージェントです。つまり、自社のシステムに組み込みたい場合は標準版のMuse Wonderを、最高性能を試したい場合はMuse Codeの有料プランでWonder Fullを使う、という分け方になります。

公表されている性能(ベンチマーク)

以下は、Metaがモデルカードで公表した比較の一部です(米VentureBeatの整理による。最大の推論設定での数値)。Meta自身が実施した評価と第三者の評価が混在しているため、あくまで「会社発表の参考値」として見てください。数値は高いほど良く、ベンチマーク同士の数値を比べることはできません。

評価(内容)Wonder FullWonderGPT-6 AstraClaude Opus 5.5
Artificial Analysis Intelligence Index(総合)56525358
Harvey LAB-AA(法務タスク)13.110.08.64.2
AutomationBench-AA(業務自動化)45.439.141.641.2
JobBench(専門職タスク)75.370.566.175.4
SWE-Marathon(長時間のソフト開発)57.553.142.546.3
Terminal-Bench 4.0-AA57.152.059.159.6
HealthBench Pro(医療・健康)62.360.565.365.6

第三者の評価機関Artificial Analysisの総合指標では、Wonder Fullが56でClaude Sonnet 5.5と並び、GPT-6 Astraなどを上回る一方、Claude Opus 5.5(58)には届いていません。法務や長時間の開発作業では強みを見せていますが、医療系の質問などでは他社モデルが上回る項目もあり、「すべてで一番」ではない点は押さえておきましょう。

料金と使い方

標準版のMuse Wonderは、Meta Model APIで従量課金で使えます。報道で整理されたMeta公表の料金は次のとおりです。

項目料金(米ドル)
入力 100万トークンあたり4ドル
出力 100万トークンあたり20ドル
キャッシュされた入力 100万トークンあたり0.20ドル
Web検索(API経由)1,000回あたり2.50ドル

Wonder Fullは、Muse Codeの有料プラン(報道によると月額50ドルの「Power Usage」と月額200ドルの「Maximum Usage」)で使えます。いずれも利用量の上限があります。

データの扱いにも注意が必要です。報道によると、APIの従量課金は入力内容を学習に使わない「Standard」モードで提供される一方、Muse Codeのサブスクリプションは初期設定で、入力内容をモデル改善に使う「Contributor」モードになっています。社外秘の資料を扱う場合は、設定を必ず確認してください。

なお、発表当日にはMuse Codeで利用枠が想定より早く減る不具合が起き、MetaのAlexandr Wang氏がX上で修正と利用枠のリセットを報告しています。

日本から使える?日本語は?

Meta Model APIの利用規約上の制限地域の一覧に日本は含まれていないと国内の解説記事は伝えていますが、「日本で提供中」と明記した公式の記載は確認できませんでした。実際に使えるかは、登録画面で確かめるのが確実です。日本円での価格も公表されていません。

日本語については、モデルカードに「多言語のデータで学習した」とある一方、日本語単体の性能は公表されておらず、「強く対応している言語以外では性能が落ちることがある」との注意書きもあります。また、消費者向けのMuseアプリはこれまで米国とカナダ向けに提供されており、Wonderの搭載も「今後、まず有料会員から」とされています。

ビジネスでの使いどころ

専門知識がなくても、次のような「読む・まとめる・やり切る」仕事で効果を試しやすいモデルです。

  • 契約書や保険の書類を読ませて、要点と確認すべき点を洗い出す
  • 財務資料や見積もりを整理し、比較表のたたき台を作る
  • 複数の手順にまたがる業務(調べる→まとめる→下書きする)をまとめて任せる
  • 簡単な社内ツールや小さなアプリを、Muse Codeで試作する

ただし、Meta自身も「重要な操作の前には人の確認を」と推奨しています。法務や医療など判断が重い分野では、AIの答えはたたき台として使い、最終確認は必ず人が行いましょう。

Metaのこれまでの動きは、Muse Spark発表の記事や、MuseアプリがApp Store首位になった記事もあわせてご覧ください。

公式の紹介動画

AI at Metaの公式YouTubeチャンネルでも紹介動画が公開されています。

まとめ

Muse WonderとMuse Wonder Fullは、Metaが約14か月かけて立て直したAI開発の成果として出してきた、本格的な「AIエージェント向け」モデルです。標準版はAPIで手軽に試せ、上位版はMuse Codeの有料プランで使えます。

一方で、日本での正式な提供状況や日本語性能はまだはっきりしていません。まずは公開資料や小さな業務で試し、データの扱いの設定を確認したうえで、自社に合うかを見極めるのがおすすめです。

参考リンク

この記事を書いた人
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毎日20時間以上AIの実践・研究に没頭するITエンジニア。20年以上にわたり、オンラインゲームや生活関連など幅広いジャンルのオウンドメディアで執筆・編集長を歴任。現在は上場企業グループの代表取締役を務め、複数の事業者団体で理事を兼務する経営者でもある。テクノロジーの最前線に身を置きつつ、地域の商店街や神社の運営にも深く携わるなど、地域活性化にも尽力。圧倒的な現場経験とITの専門知識、経営者の視点から、信頼性の高い有益な情報を発信している。
Olive株式会社 代表取締役

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